2018年6月20日(水)

オーストリア、難民引き受けに「上限」 16年申請半減狙う

2016/1/21 10:21
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 【ベルリン=赤川省吾】オーストリア政府は20日、難民を制限する政策を導入すると発表した。引き受け人数に上限を設けて2016年の難民申請を昨年の半分以下に抑え込むことを目指す。寛容な難民政策からの転換となる。予想を超えるペースでの難民の流入にどう対処するのか、政策論議をけん引してきた欧州連合(EU)とドイツは対応を迫られる。

 EUではドイツ、スウェーデン、オーストリアの3カ国が寛容な難民政策で知られてきた。このうちスウェーデンはすでに国境検問を厳しくして難民の制限を始めている。

 オーストリアも無制限に引き受けるわけにはいかないと判断。20日の与党幹部や自治体との協議で上限を設けることが固まった。具体的には19年までの難民申請を同国の人口の1.5%に当たる12万7500人にとどめる。16年の受け入れ枠は3万7500人と15年実績値(9万人)の半分以下に抑える。

 もっともオーストリアが排外主義に転じたとみるのは早計だ。「上限を設けた」という強い言葉とは裏腹に制度を厳格に運用するつもりはないようだ。上限に達したからといって難民を国境で追い返せば人道主義に反し、EUの基本理念に抵触する。「政治的な努力目標の数値にすぎない」。そう地元の高級紙スタンダードは解釈する。

 むしろオーストリアは政策の転換を国内外でアピールし、そのアナウンスメント効果で難民が減ることを期待する。難民問題に真剣に向き合う姿勢を示し、不安を持つ有権者が極右に流れるのを防ぎたいとの思いもある。

 口先介入で流入ペースを鈍らせようと試みるオーストリアだが、EU全体に与える影響は大きい。オーストリアの方針転換で、域内では難民引き受けに消極的なムードがさらに強まる。難民を各国で分担するというEU構想は頓挫。EUは機能不全に陥った難民政策の練り直しが急務となる。

 ドイツの対応も焦点となる。20日の与党の会合では隣国オーストリアに追従して「上限」を設けるべきだとの声も出たが、メルケル首相は拒否した。大型地方選を控え、寛容な難民政策を続けるか世論は割れる。

 弱者を助け、人道主義を重んじるという理想を貫くのか。それとも予想を超える流入で音を上げるのか。欧州の難民政策は岐路に立つ。

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