シリア政府軍、クルド人拠点空爆 米反発し軍機急行

2016/8/20 20:33
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【イスタンブール=佐野彰洋】内戦が続くシリアで少数民族クルド人勢力を巡る緊張が高まっている。北東部ハサカでは18日に政府軍がクルド人側拠点を初めて空爆。アサド政権は同勢力を支援する米側の反発を無視し、その後も軍用機を繰り返し派遣している。過激派組織「イスラム国」(IS)が弱体化するなか、米国やトルコ、ロシアなどを加え、今後の事態を有利に運ぼうとする思惑が交錯している。

シリア人権監視団(英国)によると、シリア政府軍は20日まで3日連続で軍用機をハサカ上空に派遣した。20日も空爆を実施したかは明らかになっていない。空爆などによりこれまでに民間人25人を含む41人が死亡、数千人が避難したという。

米軍は空爆の始まった18日に現場空域へ戦闘機を急行させた。到着前にシリア軍機は現場を去り、接触はなかった。

米軍にとってシリアのクルド人の民兵組織はIS掃討における貴重な地上部隊。数百人規模の軍事顧問団を派遣して支援している。

米国防総省のデービス報道部長は19日、「米軍が危険にさらされたときは自衛の権利を持っている」とし、アサド政権に警告を発した。

シリアのクルド人の一部は親子2代のアサド政権下で市民権を与えられてこなかった。2011年の内戦勃発後、政府軍は首都ダマスカス周辺や地中海沿岸地域の防衛に専念するため、クルド人が多く住む北東や北部地域からは撤退していた。

この間、クルド人勢力はトルコ国境沿いでISを駆逐し、一帯の実効支配を確立した。3月には一方的に連邦制の施行を宣言するなど自治を求める姿勢を鮮明にした。

AFP通信によると、ハサカではクルド人側が政府系民兵の撤退を要求していた。シリア政府筋は「空爆は国家主権を侮辱するに等しい要求を取り下げるべきだとのメッセージだ」と語った。

アサド政権同様に、クルド人の動きに神経をとがらせるのが北隣のトルコだ。シリア北部での事実上の自治区出現は、トルコ国内のクルド人の分離独立要求を勢いづかせかねず、安全保障上の重大な脅威に映る。

トルコ国内でテロを繰り返すクルド人勢力はシリアの勢力と関係が深い。米国にクルドとの協力を取りやめるよう再三申し入れてきた。7月のクーデター未遂事件を巡る在米宗教指導者ギュレン師の送還問題も加わり、米国とトルコの関係はぎくしゃくしている。

トルコのエルドアン大統領は9日にロシアを訪れてプーチン大統領と会談。昨年11月のロシア軍機撃墜事件で悪化した関係の正常化に合意したうえで、シリア問題について会談時間を延長して話し込んだ。ロシアが後ろ盾であるアサド政権の存続容認と引き換えに、クルド人勢力の抑え込みを要請した可能性がある。

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