英、EU離脱の道筋混沌 交渉ようやく開始

2017/6/19 21:42
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 【ブリュッセル=森本学、ロンドン=小滝麻理子】英国の欧州連合(EU)離脱をめぐるEUとの初交渉が19日、ブリュッセルで始まった。英国は離脱後の通商関係など具体策も協議したいとの意向を示すが、EU側は英国が支払う「清算金」など離脱条件の詰めが先決との構えを崩さない。議論の入り口から双方の溝が目立ち、原則2019年3月までの交渉の行方はみえない。

英EU離脱担当相のデービッド・デービス氏(左)とEU首席交渉官のミシェル・バルニエ氏(19日、ブリュッセル)=AP
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英EU離脱担当相のデービッド・デービス氏(左)とEU首席交渉官のミシェル・バルニエ氏(19日、ブリュッセル)=AP

 メイ英首相が3月29日にEUへ離脱を正式に通知してから3カ月が経過し、ようやく双方が交渉のテーブルに着いた。交渉会合にはEUのバルニエ首席交渉官、英国のデービスEU離脱担当相が出席した。バルニエ氏は19日、「交渉の優先事項と進め方を今日定められればと願っている」と説明。デービス氏は「EUとの強力で特別な関係の構築」を目指すと表明した。

 メイ政権は、まだ総選挙後の下院の信任を正式に受けておらず、離脱担当相に留任したデービス氏の交渉権限も現時点ではあいまいだ。このため今回の交渉は1日のみ。「今後の交渉に向けた信頼構築」(欧州委員会)が主な目的で、本格的な交渉は次回以降に持ち越す見通しだ。

 EU側は欧州議会の承認などの時間も考慮すると、18年10月までの合意が必要だとしている。残された交渉期間が限られる一方で、英国とEUは交渉の進め方を巡ってさえ溝が目立つ。

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 EU側は交渉を「二段構え」で進める方針。まずは英国で暮らすEU市民の権利保護や、英国との交渉難航が必至な「清算金」など、離脱条件に限定して交渉を進める。そこで「十分な進展」があったと加盟国首脳らが判断すれば、離脱後の英国との自由貿易協定(FTA)など通商協定の準備協議に入る。

 一方、英国側は離脱後の通商関係を巡る協議もなるべく同時並行で進めたい考え。産業・金融界からは英事業を見直す動きが早くも出始めており、早期に離脱後のEUとの通商関係の姿を示すことで、企業の引き留めを図る狙いがにじむ。

 EU単一市場より移民制限を優先する「ハードブレグジット(強硬離脱)」を掲げてきたメイ首相の求心力が保守党の総選挙敗北で低下したことで、英国の離脱戦略が迷走する懸念も強まっている。

 総選挙で保守党の議席確保を支えた保守党スコットランドの代表で、親EU路線を掲げるデビッドソン氏は「戦略が見直されることを期待している」と発言。保守党内の穏健離脱派が声を強めている。ただ保守党内では重鎮を中心に強硬離脱を求める声も根強い。メイ政権が板挟みとなり、戦略をまとめられない懸念がある。

 英政府はEU単一市場からの撤退を明確に掲げる一方、関税なしでモノを取引できる関税同盟への残留には含みを残す。「無関税の取引を離脱後も維持する」。18日付の英タイムズ紙への寄稿でジョンソン外相は訴えた。日産自動車など日系企業をはじめ、英国内の製造業からEU域内での自由なモノの行き来を継続するよう求める声が強くあがっている。

 一方、EU側は英国が移民制限や資本権限などで主権回復を求める一方で、EU単一市場で享受している恩恵をできるだけ温存しようとする「いいとこ取り」は認めない構え。総選挙後の英国内で議論が広がる「ソフトブレグジット」論議が「時間の浪費」(バルニエ氏)につながらないか警戒する。

 19年3月の交渉期限は延長が可能だが、EU加盟国の同意が必要となる。交渉期限までに合意できなければ、英国が先行きがはっきりしないままEUから放り出される「無秩序な離脱」となる懸念がある。

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