2018年9月25日(火)

トルコ、EUと溝深まる 死刑復活や加盟交渉見直し視野

2017/4/19 0:57
保存
共有
印刷
その他

 【イスタンブール=佐野彰洋】大統領への権限集中を狙った国民投票に勝利したトルコのエルドアン大統領と欧州との溝が深まっている。同氏は17日、欧州連合(EU)の加盟基準に抵触する死刑制度の復活に改めて言及。国民投票の問題点を指摘した欧州の監視団にも激しく反発した。EU側ではトルコの民主化後退を理由に、加盟交渉停止を求める強硬論が勢いづく可能性もある。

 「国会が承認すれば署名する」。17日夜、首都アンカラの大統領宮殿に集まった支持者を前に強調したエルドアン氏は、前夜の勝利演説から2晩連続で死刑制度復活に前向きな姿勢を示した。同制度の復活やEU加盟交渉の継続の是非を問う国民投票を実施する可能性にも言及した。

 EU加盟候補国のトルコは交渉開始の条件を満たすため、エルドアン氏が首相だった2004年に死刑制度を完全に廃止した。しかし、昨年7月に軍の一部が起こしたクーデター未遂事件をきっかけに政権を支持する保守層の一部で復活論が湧き起こった。

 EUは死刑制度復活は加盟交渉停止につながる「譲れない一線」(ユンケル欧州委員長)と警告を発してきた。国民投票でエルドアン氏が勝利すれば、当面は有権者の歓心を買う必要がなくなり、過激な言動を控えるようになるとの見方もあったが、期待は消え去った。

 エルドアン政権は17日夜の閣議で、欧州側が人権侵害の温床との懸念を示してきた非常事態宣言の3カ月延長も決めた。

 ワシントン近東政策研究所のソネル・チャープタイ氏は、エルドアン氏に関し「支持基盤を引き締めるため、西側との対立を続けざるを得ない事情がある」と指摘する。

 対トルコ強硬派で知られるオーストリアのケルン首相は17日、トルコのEU加盟の可能性は「事実上葬り去られた」と述べた。トルコの改憲内容は大統領が国家元首と行政の長を兼ね強大な権限を握る一方で、国会のチェック機能や司法の独立性が大幅に低下する「独裁」(欧州メディア)体制に道を開く。民主主義国家の連合であるEUの一員に迎えるにはふさわしくないとの主張だ。

 国民投票の結果は賛成が51.4%、反対が48.6%の僅差だった。両者の差は票数では約138万と、5千万近い投票総数と対比してもわずかだ。投票で不正があったとして、イスタンブールでは17日、数千人の市民が街頭で抗議活動を行った。監視団を送った欧州安保協力機構(OSCE)は選管当局の対応などが「国際基準に達していない」と指摘した。

 最大野党の共和人民党(CHP)は18日、高等選挙委員会に対し、投票結果を無効とするよう申し立てを行った。エルドアン政権はこうした批判に猛反発しているが、正統性への疑念は欧州で広がる可能性もある。

 欧州委員会のシナス報道官は18日、「申し立てのあった不規則な事案について透明性の高い調査を開始するよう」トルコ側に求めた。

 安全保障分野の連携にも暗雲が垂れ込めている。北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコの空軍基地には過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦に参加するドイツ軍も駐留している。トルコ政府は昨夏、独連邦議会がトルコが否定するオスマン帝国による「アルメニア人虐殺」を認定したのを理由に独議員団の基地訪問を拒んだ。

 欧州は南方地域の防衛や難民流入の抑制でトルコと協力、依存する関係にある。両者の連携が綻べば、テロ対策で後れをとるなど地域の不安定化要因となる恐れもある。

秋割実施中!日経Wプランが12月末までお得!

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報