ギリシャ破綻、ひとまず回避 EUは8月本格支援 - 日本経済新聞
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ギリシャ破綻、ひとまず回避 EUは8月本格支援

【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)や欧州中央銀行(ECB)が16日、ギリシャ支援に相次いで動き出したことで、ギリシャがユーロ圏から離脱し、経済が破綻するシナリオはひとまず回避されそうだ。EUは8月をメドに820億ユーロ(約11兆円)超の金融支援を正式決定する運び。それまでは約70億ユーロのつなぎ資金を緊急融資して資金繰りを支える。ギリシャ国内でくすぶる反欧州感情に配慮し、EUやECBはスピード支援をアピールする立場だ。

支援が動き出したのは、ギリシャ議会が16日未明に金融支援の条件として要求されていた財政改革法案を可決したためだ。正式な金融支援の決定までには時間がかかるが、EU側がギリシャの行動に素早く対応している姿勢をアピールし、ギリシャ内で「反EU」の機運が高まるのを避ける狙いがありそうだ。

ユーロ圏財務相会合が16日の電話協議で、新たな金融支援に向けた手続きで一致したのを受け、次の焦点は支援国側の議会の承認に移る。ドイツなど6カ国で新たなギリシャ支援には議会承認が必要となる見通しだ。

ただ与党内からもギリシャ支援反対論が出ていたフィンランドでも16日、議会が支援への政府の参加を承認。ドイツ議会も17日に開く議会で承認される公算が大きい。

議会承認が得られれば、17日にも再びユーロ圏財務相による電話協議を開く。そこで、ユーロ圏が財政危機に陥った加盟国を支援する「欧州安定メカニズム(ESM)」を軸にした支援手続き開始を決める。EUは3年で820億~860億ユーロの支援を検討している。

ESMのレグリング総裁は16日、独メディアに対し、金融支援のうち500億ユーロ程度がESMからの融資になると語った。支援手続きでは、国際通貨基金(IMF)を支援にどう組み込むかや、ギリシャ側が求める債務負担の軽減を認めるかなども検討課題となる。

ギリシャ支援の正式決定は8月前半以降となる見通しだ。それまではEUがつなぎ資金を融資して、ギリシャを支える。ギリシャは欧州中央銀行(ECB)が保有する国債の償還などを賄うため、20日までに計70億ユーロを確保する必要がある。欧州委員会によると、EUの財務相らは16日、70億ユーロの緊急融資をギリシャに提供する方向で原則合意した。つなぎ融資はユーロ圏だけでなく、EU加盟国全体を対象にした金融危機時の支援制度を使う。

ECBも16日、ギリシャ国内の銀行への資金繰り支援策を拡大した。「緊急流動性供給(ELA)」と呼ばれる制度による資金供給の枠を9億ユーロ追加。同制度は預金流出に見舞われているギリシャの銀行にとって資金確保の命綱となっている。

ユーロ圏の各国政府・ECBが「支援着手」をアピールするのは、ギリシャ国内に広がった反欧州の機運を鎮めるためだ。金融支援の実施が遅れて経済の混乱が長引けば、ギリシャの再生コストが膨らむ恐れがある。

▼欧州の金融支援 欧州連合(EU)の金融危機時の支援策は、EU28カ国全体による支援と、ユーロ圏19カ国に限った支援がある。新たなギリシャ支援の中核となるのがユーロ圏による「欧州安定メカニズム(ESM)」の中長期融資だ。ユーロ圏外も支援対象に含むEU全体の支援制度は「欧州金融安定メカニズム(EFSM)」と呼ばれ、ギリシャへのつなぎ資金の緊急融資に使う。各国の銀行の資金繰りを支えるのが、欧州中央銀行(ECB)の「緊急流動性支援(ELA」)だ。無担保で各国中銀が銀行に資金供給する。

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