中国「平和路線の堅持を」 日本の安保法案衆院通過で
【北京=永井央紀、ソウル=加藤宏一】中国外務省の華春瑩副報道局長は16日、日本の安全保障関連法案が衆院本会議で可決されたことについて「日本が歴史の教訓をくみ取り、平和路線を堅持して中国の主権や安全を損なわないよう強く促す」との声明を発表し、自衛隊の海外活動の拡大をけん制した。
中国外務省によると16日、北京で谷内正太郎国家安全保障局長と会談した楊潔篪国務委員(副首相級)は安保法案について厳重な懸念を表明し、「専守防衛政策を放棄するのではないかと周辺国を心配させてはならない」と述べた。
安倍晋三首相による戦後70年談話を念頭に、「日本は歴史問題で積極的なメッセージを明確に出すべきだ」と指摘した。
中国メディア各社も法案を批判的に報道した。人民日報海外版は16日付で日本国内の反対意見が増えていることを指摘。「世界のためではなく米国のための法案だ。米国が進めるリバランス政策の求めを満たすものだ」と伝えた。
環球時報は電子版で「地域の安全に複雑な影響を与える」との国防部の懸念を紹介。香港でもフェニックステレビが法案が委員会で可決された15日に、尹卓・海軍諮問委員会少将の発言として「米国と協力して中国をけん制する路線だ」と指摘している。
一方、韓国外務省の報道官は16日の記者会見で「国会の手続きが続く中、我々が現段階で言うのは不適当だ」と述べ、具体的な論評を避けた。韓国政府は安保法制は容認する立場だが、報道官は「朝鮮半島の安保や韓国の国益に影響を与える事案については韓国の要請や同意がなければ認められない」と述べ、従来の立場を改めて強調した。
南シナ海での中国の海洋進出に警戒感を強めるフィリピンは日本の安保法制に対して支持を表明している。同じく中国と領有権問題を抱えるベトナムは、外務省の報道官が同日の記者会見で、「日本がアジア太平洋地域や世界の平和と安定、協力と発展の維持に向け、より積極的で建設的な貢献を続けていくことを望む」と述べた。