2018年4月22日(日)

[FT]資本主義に危機 租税回避、公正な競争阻害

FT
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2016/9/18 3:30
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Financial Times

 資本主義は時折、強欲な資本家の手から救い出す必要がある。制約がなければ企業は独占に走り、技術革新を起こした企業には利益が集中する。創造的破壊をもたらしたと威張る企業家も、時がたつと既得権益を守り、そこに安住しようとする。資本主義は競争を強いれば機能するが、成功した資本家は競争を好まないものだ。

■国同士が競う税率引き下げ

 このことをよく理解していたのが第26代米大統領セオドア・ルーズベルトだ。彼は20世紀初頭、カルテルや独占を禁じるシャーマン法を使い、大企業の独占的な利潤追求行為を規制した。以来、時により効果に差はあったが、独禁法は消費者の利益を守り、大企業も競争下でなら利益をあげることが正当化された。

 ところが、グローバル化が進み、同時に法の抜け穴を突く手法が登場して、状況は一変する。各国の大企業が国境を越えて活動するようになり、すべての企業を同じ条件で公正に競争させることが難しくなった。グローバル化で租税回避の機会が急増する一方、各国が税率引き下げ競争を繰り広げる中、市場における競争を維持しようする政治家の意志はくじかれてきた。政治家は、巨大多国籍企業やその下で手厚い資金をもらって活動するロビイストたちを相手に規制に乗り出すことには及び腰だ。

 こうした企業への課税は強化したいところだが、税率を上げ過ぎて投資や雇用が海外に移ってしまっては元も子もない。結局、そのしわ寄せを被るのは消費者と一般の納税者だ。市場経済も敗者といえる。

 そこへ登場したのが欧州委員会だ。欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会で競争政策を担うベステアー委員は8月末、アイルランド政府に対し、アップルに過去に与えた税優遇分130億ユーロ(約1兆4900億円)を追徴課税するよう命じて話題になった。ちなみに、同社は税務当局の手が及ばないオフショアに、推定2150億ドル(約21兆9000億円)もの資産を保有している。

 ベステアー氏は数年に及ぶ調査の結果、アイルランドによるアップルへの複雑な税優遇措置は、特定企業だけを優遇することを禁じたEUの「国家補助規制」に抵触し、公正な競争が阻害されていると結論づけた。アップルが払っていた税率はわずか0.005%だと同氏は言う。もっとも、アップルはこの数字に異議を唱え、欧州委の判定と争う構えだ。

■ルールの尊重が社会の繁栄に

 欧州委が問題視しているのはアップルだけではない。同委は米スターバックスや米アマゾン・ドット・コム、米マクドナルドが欧州諸国から受けた税優遇が、企業競争にどんな影響を与えたかについても調査中だ。ベステアー氏はEU競争法違反の疑いで、米グーグルについても買い物検索、携帯端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」、それにインターネット広告事業に関して調べている。

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