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「中国のバフェット」郭氏 失踪、直後に復帰の謎

【上海=土居倫之】中国の著名投資家で民営投資会社、復星集団の郭広昌董事長が突然連絡を絶った。4日後の14日に復星集団開催の会議に出席し、職場に復帰したが、"失踪"中は当局の調査に協力していたとされる。詳細な理由は謎のままで、投資家や銀行の間には不安が広がっている。

14日午前、復星集団が年に一度開催する全体会議に郭氏が姿を現すと、集まった社員から長い拍手が起きた。事実上の創業者である郭氏が10日に連絡を絶ってから社内や投資家、銀行は揺れていた。

香港に上場する中核子会社の復星国際は11日に株式の売買を停止。13日夜に急きょ投資家向け電話会議を開いた。翌14日の株式売買再開を前に投資家の不安を一掃する必要があったからだ。

梁信軍副董事長は郭氏について「上海で司法機関の調査に協力している」と明らかにした。汪群斌執行董事総裁は調査について「(当社ではなく)個人に重点が置かれているはずだ」と答えた。具体的な調査内容については回答を避け、現在も郭氏がなぜ調査を受けたのかは謎のままだ。

ヒントは8月11日に上海市第二中級人民法院が下した判決にある。上海市政府系国有企業の上海聯華超市の元董事長、王宗南氏の収賄罪を認定し、18年の刑を下した。国営新華社によると、王氏に贈賄したのは復星集団の董事長「郭某某」。新華社は匿名で報じたが、郭氏であることは明らかだ。王氏は自身の父母に対して復星集団の傘下企業が開発した別荘を安価に売却するよう持ちかけ、郭氏はこれに同意。王氏の父母は市価より269万元(約5000万円)安くこの別荘を入手したという。

復星国際株の売買が再開された14日、郭氏の職場復帰のニュースが伝わったにもかかわらず、株価は10%近く下落した。15日も3%超安と下落に歯止めがかからない。

株安の背景には脆弱な財務体質もある。13日の電話会議で汪氏は「当社はいかなる借入契約も債務不履行(デフォルト)は発生していない」と健全性を強調した。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると同社の格付けは投資適格を満たさないダブルB格。積極買収で膨らんだ負債が低い格付けの要因だ。

「中国のバフェット」を自称してきた郭氏。ただ復星はバフェット氏の特徴のひとつである高い格付けと豊富な現金を元手にした「割安株投資」の色彩は薄い。むしろ負債をテコにした買収に頼って成長してきた面が強い。郭氏の突然の"失踪"で生じた投資家や銀行の不安はまだ解消されていない。

 郭広昌氏 上海の名門校、復旦大学を卒業後、仲間とともに1992年に復星集団を設立した。不動産を中核に鉄鋼やリゾート、海外の高級ブランド、保険会社など買収を繰り返し、巨大化した。
 郭氏は米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏を信奉してきた。日本への投資にも積極的で、東京都内のオフィスビル2棟を取得したほか、復星が29.9%出資する上海豫園旅游商城は11月、星野リゾートトマム(北海道占冠村)の株式100%を取得している。

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