アイルランド、多国籍企業の税制優遇廃止
【ロンドン=黄田和宏】アイルランド財務省は14日、2015年の予算案を発表し、多国籍企業の法人税の支払いを軽減するために認めてきた優遇措置を廃止すると発表した。企業が関連会社への利益移転などを通じて法人税率よりも低い税金しか負担していないことに国際的な批判が強まっていることに対応する。米グーグルなど優遇措置を利用してきたハイテク企業に影響が広がりそうだ。
ヌーナン財務相は14日、アイルランド議会で演説し、「アイルランドに拠点のある企業は国内で課税対象になる」と述べ、一部で認めてきた非課税措置を取りやめる方針を示した。15年以降に新規設立する企業は優遇措置を利用できず、優遇策を受けている企業も20年末で猶予期間が終わる。
優遇策は「ダブル・アイリッシュ」と呼ばれる仕組み。この制度を利用する企業は実際の事業を運営する会社と、知的財産などを管理する関連会社の2社をアイルランドに設立。関連会社の税法上の本拠を海外の租税回避地とすることで、事業会社から関連会社への利益移転を非課税にできる。
例えば、グーグルは関連会社の税法上の拠点を英領バミューダ諸島に置き、欧州事業の利益を移転してきた。こうした取引により、アイルランドの法人税率の12.5%を下回る低税率を享受してきた。
一方、企業の税逃れに対しては国際的な批判が強まっている。すでに、アイルランドがアップルに対して適用してきた優遇措置について、欧州委員会は欧州連合(EU)の競争法に違反するとの暫定判断を示している。アイルランドは税逃れを容認しているとのイメージの悪化を避けるために、優遇措置を見直す。
アイルランド政府は今後、議会や欧州委員会での承認を受けて、予算を成立させる見通しだ。