2019年2月17日(日)

16年秋のポンド急落は「複合要因」 国際決済銀が報告書

2017/1/13 21:26
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【ロンドン=黄田和宏】世界の中央銀行が加盟する国際決済銀行(BIS)は13日、2016年10月上旬に英通貨ポンドが数十秒の間に9%近く急落した市場の急変動に関する検証報告書を発表した。電子取引業者の活発な取引が、予期せぬ市場の反応を連鎖的に引き起こしたとして「複合的な要因が変動の引き金となった」と分析。電子取引の普及で為替市場の構造が複雑になるなかで、再発防止策も急務とみている。

英ポンドは昨年10月7日、アジア時間早朝(日本時間午前8時すぎ)に1ポンド=1.26ドル程度から1.14ドル台に一気に下げ、1985年以来、31年ぶりの安値を更新した。ポンドは昨年6月の国民投票以降、欧州連合(EU)との離脱交渉を巡る不透明感から下落基調にあったが、1日で歴史的な下げを記録した。

下げのきっかけとなったのが、何らかの理由でまとまった売り注文が出たことだ。8秒間に1.24ドル台まで下げた当初は金融市場は秩序を保っていたが、その直後から市場が機能不全に陥ったという。

米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は急変動を受けて、ポンド・ドルの先物取引を10秒間停止した。電子取引などではCMEのデータを参考にする取引業者もあり、節目となる1.2ドルまで下げると、多くの電子取引業者のシステム上でポンドの買い注文が完全に途絶えた。

取引が急激に落ち込むなかで、特定の参加者の注文の影響力が高まり、その後は一気に1.14ドル台まで下げた。さらに、オプション取引の損失回避のための売り注文が膨らんだことなども動きを増幅した。

急落とほぼ同時刻に、オランド仏大統領が「厳しい姿勢で英国とのEU離脱交渉に臨むべきだ」とする英紙フィナンシャル・タイムズの報道が流れた。これがきっかけとの見方もあったが、BISは主因ではないとみている。誤入力による発注ミスや閑散な時間帯を狙った意図的な売り注文、アジアの個人投資家の動向などが直接的な要因となった可能性も低いと分析した。

急落したポンドとドルの取引は、欧州時間が始まる英国の午前7~9時ごろや、米国市場が開く同午後1時以降に活発になるのが一般的だ。アジア早朝の取引時間はポンドの扱いに習熟した参加者が少なく、取引量も少ないために金融機関も取る市場リスクを制限していることも影響したもようだ。

ポンド急落はその他の通貨には波及せず、短期間に相場が回復したことから、金融機関への影響は限定的だった。「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれる、こうした相場の急落は近年増えており、市場参加者が教訓を得ている面もある。英中央銀行イングランド銀行のカーニー総裁は「秩序だった市場の機能が信頼の基盤となる」と述べ、金融機関などに自らの取引が市場にどのような影響を及ぼすかについて責任を持つよう求めている。

もっとも、通貨の急落が市場の信頼を損ない、実体経済にも悪影響を及ぼすおそれもある。為替市場では、新たな市場参加者として金融機関以外の電子取引業者の存在感が高まるなど、市場構造は複雑になっている。BISは政策当局者がより一層、市場への理解を深めるとともに、市場が不安定になる要因を分析する必要性が高いと指摘する。

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