英中銀、成長率見通しを引き下げ 16年2%増に
【ロンドン=黄田和宏】英中央銀行、イングランド銀行は12日、四半期のインフレ報告書を発表し、経済成長率の見通しを引き下げた。欧州連合(EU)残留の是非を問う英国民投票を6月に控え、投資活動にブレーキがかかっており、景気への悪影響がはっきりしてきたことを反映した。投票結果が「離脱」となれば、景気後退に陥る懸念があるとした。
2016年の実質国内総生産(GDP)は前年比2%増と、2月時点の予測値の2.2%増から引き下げた。EU離脱懸念を背景に、4~6月期に向けて景気の減速感が強まっているためだ。17、18年はいずれも2.3%増と、見通しを小幅に引き下げた。
一方、消費者物価指数(CPI)上昇率の見通しは、2年後に2.1%とし、目標とする2%に向けて回復するシナリオを維持した。
カーニー総裁は12日の記者会見で「最も重大な予測のリスクは国民投票だ」と説明した。6月の国民投票でEU離脱が多数を占めた場合には「景気後退に陥るリスクもある」と指摘した。そのうえでインフレ期待が安定するように必要な措置を取るとの考えを示した。
オズボーン財務相も11日、英議会で「離脱が決まった場合に金融市場が不安定になることに備え、英中銀と共同で緊急対応策を検討している」と述べた。
英中銀は、EU離脱が決まれば「英ポンドがさらに下落する可能性が高い」と警戒している。通貨安や需要の落ち込みなどで「成長率が大きく下がり、インフレ率が顕著に上昇する可能性がある」とみる。
英中銀は12日、金融政策委員会で、政策金利を現行の年0.5%、国債を大量に買い入れる量的緩和策の規模を3750億ポンド(約59兆円)に据え置くことを全会一致で決めたと発表した。