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ポルトガル、政権交代か 経済計画否決で内閣総辞職

【パリ=竹内康雄】ポルトガル議会(定数230)は10日、コエリョ第2次内閣の経済政策計画を反対多数で否決した。事実上の不信任で、憲法の規定によりコエリョ内閣は総辞職した。10月に総選挙を終えたばかりのポルトガルだが、今後、左派政権が誕生すればこれまでの財政再建路線が揺らぐとみられる。スペインなど景気が回復途上にある他国の選挙にも影響を与えそうだ。

11日の欧州市場で、ポルトガルの国債相場は下落(金利は上昇)して始まった。投資家が左派政権の誕生を懸念して、国債を売ったためだ。コエリョ首相は中道右派の財政再建派。市場では、左派政権が誕生すれば積極財政路線に変わり、同国の財政規律が緩むとの見方が強まっている。

ポルトガルでは大統領が首相を指名する。カバコシルバ大統領は次期首相を決めるため、近く各政党と協議に入る。10月4日に総選挙を実施したばかりの同国は憲法の規定で来年前半までは解散総選挙ができない。大統領はコエリョ氏に続投を要請し、次の総選挙までの選挙管理内閣を運営させるか、最大野党の社会党(中道左派)のコスタ党首を首相に指名することになる。

コスタ氏は「緊縮財政は我々を苦しめた」として、コエリョ氏の路線を修正する方針を示す。具体的にはコエリョ首相が進めてきた公営企業の民営化計画の見直しのほか、公務員給与や最低賃金の引き上げを進めるとみられる。

そうなれば、財政規律維持を求める欧州連合(EU)の欧州委員会との対立は避けられない。与党からは「緊縮策をやめればギリシャのようになる」(アルブケルケ財務相)と警戒する声もあがる。政権樹立には急進左派の左翼ブロックや共産党などの協力が不可欠だが、こうした勢力はユーロ離脱も含めた強硬な主張を持つ。政治的混乱が続く可能性もある。

財政難に陥ったポルトガルは2011年5月、EUや国際通貨基金(IMF)に総額780億ユーロの支援を仰いだ。直後に首相に就いたコエリョ氏は改革を進め、14年には実質成長率が10年以来の前年比プラスに転じ、支援から脱却した。

欧州各国からは「改革の優等生」と評価されていたが、国民からの理解は必ずしも得られていなかった。10月の総選挙では首相率いる与党連合が少数与党に転落。急進左派政党が政権についたギリシャのような混乱は避けたいものの、コエリョ政権にも満足していない、という微妙な投票心理を表した。

ポルトガルの財政再建路線が揺らいだことは、近く総選挙を控えるスペインやアイルランドの有権者の投票行動に影響を与えそうだ。12月20日に総選挙を予定するスペインのラホイ政権も中道右派。ポルトガル同様、改革を進めた結果、景気は上向いている。足元の世論調査では首相率いる与党への支持がトップだが、失業率は高いままで国民の不満は小さくない。

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