シスコとエリクソンが提携 特許の相互利用など一体運営
【シリコンバレー=兼松雄一郎】米シスコシステムズとスウェーデン・エリクソンの通信機器大手2社は9日、研究開発や営業で包括的に提携すると発表した。特許の相互利用も絡め事業を一体運営するなど、通常の業務提携より踏み込んだ内容だ。両社はフィンランド・ノキアや中国・華為技術(ファーウェイ)に対抗する「第三極」となる。通信インフラを巡る競争がさらに激しさを増しそうだ。
両社はまず、主要顧客である各国の通信大手に対し共同で営業提案する。通信インフラの効率管理、クラウドや携帯端末利用の管理といったサービスでも協力。法人市場も共同で開拓する。あらゆるモノをインターネットでつなぐ「IoT」関連市場などの分野でも一緒に開発や営業を進める。両社それぞれが2018年までに10億ドル(約1230億円)以上の売上高上乗せ効果を見込む。
さらに、相互に特許を開放することで技術開発を加速させる。無線技術に強いエリクソンと、固定回線を軸にしたインフラに強いシスコは技術的な補完性が高い。電話会見でシスコのチャック・ロビンズ最高経営責任者(CEO)は「無線に強いエリクソンと我々の技術を組み合わせることで新たな顧客層を開拓できる」と強調した。
両社が共同利用する特許は5万6千以上にのぼる。保有特許の価値が相対的に高いエリクソンに対しシスコが技術使用料を支払う。両社は今後の有望市場であるIoT向けのサービス開発で強固な研究開発の基盤を共有できるようになる。次世代の携帯通信規格である第5世代(5G)向けの研究開発でも連携する。
シスコはエリクソンとの間で、1年前から買収なども含めた協業の可能性を模索してきた。今回はスピードを重視し、出資や組織の統合は棚上げし、実現できるものから提携を幅広い分野でまとめた。
通信機器業界では競争が激しくなっている。ノキアが4月に約2兆円で同業の仏アルカテル・ルーセントを買収すると発表。ファーウェイも主力の中国市場だけでなく、欧州や新興国の通信会社に激しい営業攻勢をかけて受注を増やしつつある。
通信大手の間では、分散する通信インフラをソフトウエアで制御して柔軟に管理することで投資や維持コストを抑制する手法が浸透しつつある。これに伴い通信大手の機器調達の計画も変わり始めており、通信機器の大手は従来の営業・開発の体制を見直す必要に迫られている。こうした流れに対応し、ノキアやエリクソンは付加価値の下がった携帯端末事業を切り離して、通信大手・法人向けの機器・サービス販売に経営資源を集中させている。
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