経済政策論争、深み欠く 米大統領選討論会

2016/10/10 14:05
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【ワシントン=河浪武史】米大統領候補は9日の第2回テレビ討論会で、増減税を軸に経済政策でも応酬を繰り広げた。民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(68)は、共和党のドナルド・トランプ氏(70)の巨額税控除問題の追及に力点をおいて、政策論争は深まらなかった。世界が注視する通商政策では、中国の過剰生産問題に焦点が当たった。

「米国は世界で最も税率が高いが、これを最も低い水準に下げてみせる」。トランプ氏は持論の大規模な企業減税を今回も真っ先に主張した。米国は連邦法人税率が35%と高止まりしており、トランプ氏は15%にまで引き下げると公約している。アップルなどを筆頭に高税率を嫌った米企業は海外に資金を留保したまま本国に戻さず、米国の税源が損なわれているとの懸念がある。

一方、クリントン氏は「減税はトランプ氏のような富裕層へのプレゼントにほかならない」と批判した。クリントン氏は経済格差に強い不満を持つ低中所得層に配慮し、企業や富裕層の課税強化を掲げる。さらに、10月初旬に表面化したトランプ氏の巨額税控除問題に焦点を替えて「ドナルドの税金がゼロで、軍事や教育、社会福祉に全く貢献しないなんて間違っている」と攻撃した。

トランプ氏は1995年にホテル部門などの経営破綻で約9億1600万ドル(約940億円)の巨額損失を出し、年5千万ドル以上の税控除を受けていたことが明らかになった。今回の討論会でトランプ氏は税控除の適用を「もちろん受けた」と認めたうえで「クリントン氏の支持者も適用を受けている」と切り返した。

環太平洋経済連携協定(TPP)への反対論で注目される両氏の通商政策では、トランプ氏が「中国の不当廉売(ダンピング)で国内鉄鋼業の雇用は壊滅状態だ」と指摘した。米製造業が集まるオハイオ州や、ペンシルベニア州など具体的な激戦州に言及しながら国内雇用の維持を訴えた。

クリントン氏も「中国の鉄鋼の不当廉売は違法だ」と主張しながらも「ドナルドはその中国製鉄鋼でビルと建てている」と再び個人攻撃に転じた。ただ「通商当局者は中国に有利な状況を許してはいけない」とも繰り返し、クリントン氏も激戦州の製造業を中心に配慮をみせた。

両氏はエネルギー政策でも議論を交わした。トランプ氏は「米国には巨大な資源が眠っている。エネルギー産業を再生させて税収を増やすべきだ」と述べ、環境規制の緩和を主張した。クリントン氏は太陽光や風力など再生可能エネルギーの投資拡大を公約の柱に掲げており「気候変動対策と雇用対策の両立につなげる」と訴えた。

第2回テレビ討論会では、規制緩和と減税による「小さな政府」を掲げるトランプ氏と、社会保障政策の拡充など「大きな政府」を志向するクリントン氏の違いがはっきりした。ただ、トランプ氏の政策は巨額減税の財源をどう穴埋めするか説明がなく、クリントン氏の所得再分配政策も米経済の成長鈍化を反転できるか見通せない。両氏は個人攻撃に終始し、経済政策論争は深みを欠きながら選挙最終盤を迎えることになる。

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