2019年6月20日(木)

オバマ税制改革、不発に 最後の予算教書

2016/2/11 0:41
保存
共有
印刷
その他

【ワシントン=河浪武史】オバマ大統領が議会に提出した2017会計年度(16年10月~17年9月)の予算教書は、富裕層の課税強化や法人税制の見直しを盛り込んだ。格差是正や企業の立地競争力向上の切り札として毎年のように主張してきたが、議会多数派の野党・共和党による反対で実現のメドは立たない。税制の抜本改革構想は不発に終わりそうだ。

オバマ氏が提唱してきた税制改革は(1)富裕層の資産売却益に対する課税強化(2)金融機関への新税(3)法人税率を下げるのと引き換えに企業が海外にためる留保利益に課税強化――に大別できる。

とくに力点を置いたのが、経済格差の是正だ。中低所得層には育児支援を狙った手厚い優遇税制を敷き、財源は富裕層増税と金融機関への課税強化でまかなう。ただ、連邦所得税の累進制を今よりも格段に高める富裕層増税に対し、共和党は逆に所得税率の引き下げを求めて反発しており、接点を見いだせる状況にない。

法人税改革は連邦法人税率を先進国でも最高水準の35%から28%に下げる案が中核で、税率引き下げ自体には共和党も賛同する。製薬大手のファイザーが低税率国のアイルランド企業を買収して本社機能を事実上移転する計画を打ち出すなど、高税率が企業の海外流出につながっているとの危機感があるためだ。

ただオバマ氏は「アメ」である法人税率下げと併せて、「ムチ」として企業の海外留保資金への強制課税も盛り込む。企業が海外に滞留させている巨額の所得に対し、半ば強制的に課税するようにして米国に戻させる狙いだ。こうした企業税制の見直しによって今後10年で計5490億ドルもの歳入増を見込んでおり、事実上の増税案に産業界の反発は強く、議会を通すのは至難の業だ。

歴代大統領の中には税制改革を政権浮揚につなげたケースもある。1980年代のレーガン政権による経済政策「レーガノミクス」は、企業減税と個人の所得減税を組み合わせ、経済の活力を取り戻した。90年代のクリントン政権では所得税の最高税率引き上げなどで財政赤字解消に道筋をつけた。2000年代に入ってITバブルが崩壊した後に導入した新税制は「ブッシュ減税」と呼ばれる。

最後の予算教書ではオバマ氏は従来通りの主張を繰り返したが、大統領選の本格化で多数派の共和党との調整は時間切れが迫り、実現の可能性はさらに遠のいている。経済格差是正と、医薬品など高度産業の相次ぐ海外流出という米経済が直面する重い課題は残されたたままだ。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報