【ドバイ=岐部秀光】過激派組織「イスラム国」(IS)の最大拠点であったイラク北部モスルをイラク軍が9日奪還したことで、IS掃討作戦の次の焦点はシリアにある自称「首都」ラッカの制圧に移る。米軍の支援を受けたクルド民兵主体の部隊が包囲網を狭めており、奪還は時間の問題とされる。だが、その復興・統治はモスル以上に困難とみられる。
クルド民兵を中心に構成する「シリア民主軍(SDF)」は今月初め、ラッカの旧市街に突入した。少なくとも2千人といわれるISの戦闘員は、家族らとともに旧市街の建物にたてこもる。完全に孤立し、自爆攻撃しか対抗手段がなくなっているもようだ。
シリアでのIS掃討作戦はイラク以上に複雑だ。トランプ米政権はSDFの中心的な部隊であるクルド民兵組織「人民防衛隊(YPG)」への武器供与を認めた。だが、トルコはYPGが国内でクルド分離独立を求める非合法武装組織、クルド労働者党(PKK)と深くつながっていると考えており、反発している。
シリアではアサド政権の後ろ盾となっているロシアと、政権の存続を認めたくない米国の根本的な立場の相違があり、協力を難しくしている。
歴史的にスンニ派のアラブ住民が多いラッカではクルド民兵の統治への不満は大きい。有志国連合はSDFによる地元評議会が暫定的に統治するシナリオを描いているもよう。アサド政権もラッカの支配権を主張するが、住民は反発している。
一方、イラクでもモスルとシリア国境の間に位置するタルアファルや、アンバル州のユーフラテス川沿いの地域でISがなお支配を続けている。根絶には時間がかかるとの見方が大勢だ。