英総選挙、与党・保守党過半数割れ確実 現地メディア
【ロンドン=原克彦】英下院議員選挙(総選挙、定数650)は8日に投開票され、メイ首相の与党、保守党が改選前から議席を減らし、過半数割れが確実になった。第1党は維持する。BBCなど現地メディアが一斉に報じた。メイ首相は欧州連合(EU)からの離脱交渉を有利に進めるために議席上積みを狙って総選挙を前倒しただけに、求心力低下は避けられそうにない。EUとの離脱交渉にも影響しそうだ。
英選挙管理委員会の9日午前5時(日本時間同午後1時)時点の開票集計によると、下院の定数650議席のうち602議席が確定した段階で、保守党は289を確保。野党で最大の労働党は248を獲得した。スコットランド民族党(SNP)は34、自由民主党は10、民主統一党が10などとなっている。
BBCは最終的な予測として、保守党が318議席と改選前より12減らし、過半数(326)を割り込む可能性があると伝えている。一方、労働党は改選前から33増やし、262になると予想している。
保守党は各地で労働党などに議席を譲った。南部の選挙区ではラッド内相が再集計の末に労働党の候補を僅差で下す大接戦を演じるなど、苦戦ぶりが際立っている。
仮に保守党の議席が過半数を割り込むと、新政権の樹立には各党による連立協議が焦点になる。保守党はEU離脱への姿勢がSNPや自由民主党と相いれない。労働党はSNP、自民党とも連携の余地があるが、政権樹立にこぎ着けても安定政権となるかは不透明だ。
英国では国王(エリザベス女王)が首相任命権を持ち、議会で首相指名選挙は行わない。慣例では選挙で過半数の議席を獲得した党の指導者がバッキンガム宮殿に招かれ、任命される。どの党も過半数に届かない場合は現職首相に政権づくりの主導権がある。
英国は今年3月に正式にEUに離脱を通知。離脱条件や新たな貿易協定の協議を進めようとしているが、EUとの対立点は多い。政権発足が難航すれば、6月19日にも始める方向だった離脱交渉に影響するのは必至だ。
英国は2016年6月の国民投票でEUからの離脱を決定。選挙は移民の流入を厳しく規制する代わりに、EUの単一市場から撤退するメイ首相の強硬離脱路線の是非が最大の焦点になった。離脱後のEUとの距離感については意見が割れ、英国民の判断が注目されていた。
メイ首相が総選挙の実施を表明した4月時点では、保守党の圧勝が予想されていた。だが同党が5月に発表した政権公約(マニフェスト)で高齢者に社会保障の負担増を求めたことなどから支持率が下がり、リードが縮小した。
選挙の終盤戦には中部マンチェスターでの爆破事件などテロが相次ぎ、テロ対策も争点に浮上。当局のテロ防止策への批判が強まり、保守党には逆風になったもようだ。
労働党はテロ続発を受け保守党が緊縮政策で治安当局の予算を削減してきたことを批判した。コービン党首が提唱する富裕層への課税強化や鉄道の再国有化など、左派色が強い政策に賛同する層からも一定の票を獲得した。