米金融規制の緩和法案が下院通過 共和党独自案
【ニューヨーク=大塚節雄】米下院は8日の本会議で、与党・共和党が提出した金融規制を刷新する新法案を賛成多数で可決した。金融機関の高リスク取引を制限する「ボルカー・ルール」の廃止をはじめ、オバマ前政権下の規制を大幅に緩和する。トランプ政権の案が固まるのを待たず、与党案が先行して動き出した。だが上院通過のメドは立たず、新たな規制の姿は不透明なままだ。
新法案は「金融選択法」。下院金融サービス委員長を務めるヘンサリング議員が主導して独自にまとめ、5月に委員会で承認された。金融危機の再発防止を目的に前政権下で成立したドッド・フランク法(金融規制改革法)を抜本的に見直し、金融機関の経営の自由度を高め、企業に融資しやすい状況を整える狙い。
ボルカー・ルールは自己売買部門での高リスクの取引を原則的に禁止する内容。危機後の規制強化の象徴的な存在になってきた。消費者保護のために新設された消費者金融保護局(CFPB)も権限や機能を縮小する。破綻法制も見直し、緊急時に当局が大きな権限を持つ仕組みをやめる。資本規制も中小金融機関に有利なように見直す。
トランプ政権は現在、財務省を中心に現行法制の検証作業をしており、近く中小金融機関に重点を置いた緩和策を唱える見通し。共和党の新法案の内容は政権の主張と重なる部分も多いとみられ、米行政管理予算局(OMB)は政権として新法案を支持する声明を出している。上院での調整過程で、内容を擦り合わせるとみられる。
だが野党・民主党内には、金融安定や消費者保護には厳しい規制が必要との声が根強い。与野党の議席が拮抗し、フィリバスターと呼ぶ議事妨害の手段が使える上院で可決するメドは立っていない。
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