2019年3月20日(水)

インド中銀、苦渋の金利据え置き 資本流出・原油高を警戒

2016/12/8 0:09
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【ムンバイ=堀田隆文】インド準備銀行(中央銀行)は7日、政策決定会合を開き、政策金利を6.25%のまま据え置いた。11月上旬に印政府が決めた紙幣廃止の影響で消費落ち込みが確実ななかで利下げが期待されていたが、米の追加利上げ観測などで進む資本流出や、直近の原油高などに伴うインフレを警戒。「苦渋」の据え置き決定となった。

7日、政策決定会合後の会見で、インド中銀のパテル総裁は「(金融政策を決める中銀の)金融政策委員会は追加利下げは難しいと判断した」と述べた。国内外で経済の不確実性が高まっていると説明。金融緩和姿勢は継続するものの、取り巻く環境変化を注視するとした。

市場予想の大方は「0.25%の利下げ」だった。11月8日に印政府が決めた旧高額紙幣の廃止の影響で消費が落ち込み始めており、中銀が消費下支えのため緩和に踏み切るとみていたからだ。中銀は10月の前回会合では0.25%の利下げを実施していた。

「サプライズ据え置き」の背景には、外部環境の変化がある。7日の声明で、インド中銀は米国で追加利上げが実施されれば、金融市場が大きく変動すると説明。金利差による資金流出への懸念を示した。

実際、米大統領選挙の結果が出た11月上旬以降、インドからも資本が流出している。株や債券を通じた海外機関投資家(FII)のインドへの証券投資は11月は3939億ルピーの売り越し。インドが深刻な資本流出に悩んだ13年6月以来の多額の月間売越額となった。

インド通貨ルピーの対ドルレートは11月下旬に過去最安値となった。インドの外貨準備高は輸入額の約10カ月分の残高があり過去最高水準にあるものの、通貨防衛への懸念は残る。

直近の原油高も懸念材料だ。インドは原油の8割を輸入している。直近10月のインド消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は4.20%で印中銀が来年3月時点で目標とする5%を下回っているが、原油価格が上昇すれば、物価水準を押し上げる可能性がある。パテル総裁は物価の上押し要因として、印政府が決めた公務員給与の一斉引き上げも挙げた。

だが、紙幣廃止による消費落ち込みの影響は小さくない見通しだ。「突然の措置で消費者心理がくじかれ、買い控えが起きている」とインド自動車大手マヒンドラ・アンド・マヒンドラ幹部は話す。販売が拡大基調だった同社だが、紙幣廃止が実施された11月の国内販売は前年同月比24%減となった。

偽札の横行や隠れ資産を絶つために従来の五百ルピー札(約840円)、千ルピー札を廃し、替わりの新紙幣を刷っているが供給は追いついていない。廃止紙幣の価値総額は約14兆ルピーとされる一方、これまで供給された新紙幣はおおよそ4兆ルピーとされる。紙幣流通が減るなか、現金決済による消費は滞り、消費者の買い控えも起きている。

インドの国内総生産(GDP)の6割を個人消費が占めている。印格付け大手インディア・レーティングス・アンド・リサーチのエコノミスト、スニル・クマール・シンハ氏は「銀行は紙幣の交換業務に追われている。融資認可が遅れれば、企業投資も停滞する」と投資落ち込みも懸念する。

紙幣廃止は政府主導の政策だが、中銀は新紙幣などの増刷を担っている。パテル総裁は7日会見で「(紙幣廃止の政策は)あわてて決めたことではなく熟慮のうえだ」と強調。今後の紙幣供給に対し、不安を持たないように呼びかけた。

だが、状況が平常になる時期の見通しについては明言を避けた。7日には、GDPの替わりに経済成長を表す指標として用いている粗付加価値(GVA)の16年度(16年4月~17年3月)成長率見通しを従来の7.6%から7.1%に引き下げた。突然の紙幣廃止という世界でもまれな政策の悪影響を最小限にとどめるには、利下げによる景気刺激が必要との見方も根強い。

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