トルコでテロ、11人死亡 強権政権への反発強く
【イスタンブール=佐野彰洋】トルコの最大都市、イスタンブールの旧市街で7日朝(日本時間同日午後)、爆発が起き、地元当局によると市民4人と警察官7人が死亡、36人が負傷した。トルコでは少数民族クルド人の反政府勢力が軍や警察へのテロ攻撃を繰り返しており、政府との衝突が泥沼化。エルドアン大統領の強権姿勢への反発も犯行の背景に浮かぶ。
エルドアン氏は同日、負傷者を病院に見舞った後、記者団に対し「テロとの戦いは終結まで継続する」と従来の主張を繰り返した。
現場はボスポラス海峡の欧州側に位置する旧市街で、観光客が多く訪れるグランドバザールやイスラム教の礼拝所、ブルーモスクも近い。地元メディアの報道によると、警察のバス通過を狙い、爆弾を積んだ路上駐車の車が爆発した。遠隔操作とみられる。
在イスタンブール日本総領事館によると、死傷者に日本人が含まれているとの情報はない。
犯行声明は出ていないが、警察や軍を標的に自動車爆弾を用いる手法は少数民族クルド人の非合法武装組織、クルド労働者党(PKK)の過去のテロと共通する。国営アナトリア通信は7日のテロに絡んで、警察が4人を拘束したと報じた。事件への関わりは明らかになっていない。
2月と3月に首都アンカラで起きた自動車爆弾テロでは、計60人以上が死亡。PKKの分派とみられる組織が犯行声明を出している。
トルコにはシリアやイラクと国境を接する南東地域を中心にクルド人が多く暮らす。PKKは1980年代から分離・独立を掲げる武力闘争を展開してきた。
2013年には一時停戦が成立し、和平交渉を行ってきたが、15年7月に停戦が崩壊。PKKとの交渉を拒否し「壊滅」まで作戦継続を宣言するエルドアン氏の下、トルコ政府は徹底的な掃討を続けている。
一部では民間人を巻き添えにした市街地戦も発生した。昨夏以降、政府側はPKK要員約5千人を殺害したとする一方で、報復テロなどによる軍や警察の犠牲者数は500人規模に達する。
強権的な統治手法に傾斜し、自身への権限集中を進めるエルドアン氏は16年5月、PKKとの和平交渉再開に理解を示していたダウトオール前首相を事実上更迭。側近のユルドゥルム新首相にすげ替えた。
国会はクルド系政党を狙い撃ちにする形で国会議員の不逮捕特権剥奪を決めた。政府の「対テロ」作戦を批判する野党議員が今後相次ぎ逮捕され、失職に追い込まれる懸念も高まっている。
これらエルドアン氏主導の政府強硬策はPKKの一段の過激化と治安悪化を招く悪循環を生んでいる。トルコはPKKとは別に過激派組織「イスラム国」(IS)からのテロ攻撃にもたびたびさらされている。4月の外国人旅行者数は前年同月比28%減り、1999年5月以来最大の落ち込みを記録するなど、治安への懸念は経済の重荷となっている。
政府は年初からの約4カ月で自爆テロ49件を含む85件のテロ攻撃を未然に防いだと公表しているが、一般市民に紛れるテロリストの凶行を完全に防ぐのは多大な困難が伴う。