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「イスラム国」テロ防げ 東南ア、拘束や往来制限

【シンガポール=菊池友美】東南アジアでテロ対策を強化する動きが広がっている。中東の過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)などと連携したテロの発生と拡大を防ぐ目的だ。マレーシア下院は7日、テロに関与したと疑われた人物の無期限拘束が可能になるテロ対策法案を可決し、インドネシアもIS支配地域との往来を制限する方向だ。暴力の連鎖を防ぐ水際作戦を進め、安定した経済成長の維持につなげる。

マレーシア下院が可決した新法案はテロ計画への関与が疑われる国民の即時拘束が柱だ。政府内に設置する「テロ対策委員会」が拘束の是非を判断し、裁判などの手続きを経ずに事実上無期限での拘束を可能にする。対策委には被疑者の外出やインターネットの利用を制限する権限も与える。上院の承認などを経て施行する。

テロの脅威が高まったとの危機感が新法を後押しした。同国当局は5日、首都クアラルンプールでテロを企てた容疑で17人を拘束した。このうち2人はシリアから最近帰国し、ISとの関係が疑われている。マレーシアはイスラム教を国教に掲げるが、刑法などには同教の戒律は取り入れていない。これに反発する原理主義者の攻撃を受けやすいと指摘されている。

世界最大のイスラム教人口を抱えるインドネシア政府は、ISに賛同する国民の海外渡航を制限する方針だ。ジョコ大統領も支持し、該当する国民の旅券を無効にする方向で検討を進めている。

同国政府はISへの支持が国内で広がることを警戒している。中東でISに参加するインドネシア人は500人を超えたとされる。過激派対策を担当する同国軍少将は「中東からの帰還者によるテロのリスクがある」とし、旅券の無効化でISへの参加を未然に防ぐ方針を示す。

テロの脅威は東南アジア各国にくすぶる。タイではマレーシアと国境を接する最南部で、反政府イスラム武装勢力がタイからの分離独立を掲げて爆弾を使ったテロを起こしている。プラユット暫定政権は1日付で首都バンコクなどの戒厳令を解除したが、最南部の3県は引き続き戒厳令を残した。

東南アジアはイスラム教徒や華人らが共存するモザイク社会だ。かつては民族や宗教対立が激しく、暴力による衝突も相次いだ。足元では経済成長を背景に対立は和らいでいるが、もし大規模なテロが発生すれば再び暴力の連鎖が広がる恐れがある。

東南アジアは外資を誘致するため、治安の維持を最優先課題の一つに掲げる。国によるテロ対策が行き過ぎれば国民の不満を招き、かえって治安が悪化するリスクも否定できない。

マレーシアの新法では「テロ関与」と判断する基準を示していない。裁判などの司法手続きを踏まない長期拘束は人権侵害との指摘もある。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは「個人から裁判の機会を奪う抑圧的な法律だ」と批判する。

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