ファイザー、アラガンと合併断念 米の節税規制で

2016/4/6 20:58 (2016/4/7 0:50更新)
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【ニューヨーク=山下晃】米医薬大手ファイザーとアイルランドの同業大手アラガンは6日、合併を撤回すると発表した。米財務省が節税目的のM&A(合併・買収)に歯止めをかける新たな規制を発表し、節税効果が見込めなくなったことが響いた。税務のテクニックを駆使して税負担を減らしてきた米国の多国籍企業は戦略の見直しを迫られる。

ファイザーは6日、合併破談の理由を「米財務省の新たな規制導入のため」と説明した。ファイザーはアラガンに合併作業にかかった経費として1億5000万ドル(約165億円)を支払う。ファイザーによるアラガンの買収が成功すれば総額1600億ドルと、歴代2位の大型M&Aになるはずだった。

ファイザーとアラガンが合併で合意したのは昨年11月。ファイザーはしわとりのヒット薬「ボトックス」やドライアイの治療薬に強いアラガンを取り込み、世界最大級の製薬企業をめざした。法人税率が12.5%と米国より低いアイルランドに本拠を移し、税負担を軽減するのも狙いだった。

両社の正式発表を受けて6日午前の米国株式市場では買収負担が軽くなると好感されたファイザー株は上昇して取引を始めた。アラガン株は前日に約15%安で終わったが、6日は買いが優勢となっている。

アラガンのブレント・サンダース最高経営責任者(CEO)は6日朝、米経済テレビに出演し「我々の案件が標的になったようだ」と財務省のルール変更に不満を述べた。

米財務省の新規制は、米国より税率の低い国の企業を買収し、本社を移転することで節税しようとする企業にハードルを課す。米国に残る子会社の税控除を制限する。ゴールドマン・サックスのエコノミスト、アレック・フィリップス氏は「今回の税規則の改正は広範囲にわたり、予想よりも厳しい規制だ」という。

アラガン買収の破談はファイザーにとって節税目的のM&Aの2回目の失敗だ。14年には米国より税率の低い英国の製薬大手アストラゼネカに買収を提案したがアストラゼネカが拒否。提案の取り下げに追い込まれた。

米国は法人実効税率が約40%と、先進国で最も高い。世界経済の成長が鈍るなか、多国籍企業は節税で株主利益を最大化してきた。「米国外の税率の低い国の企業をどう取り込むかが、ここ数年のM&Aのテーマだった」(米投資銀行幹部)

ゴールドマンなどのまとめによると、税務戦略の駆使で2015年の米主要500社平均の法人実効税率は30%を下回っった。ファイザーとアラガン合併は、こうした流れに危機感を強める米政府の格好の標的となった。オバマ大統領は5日の記者会見で「米国には富裕層や大企業だけが使える抜け道がある」と強調。企業の節税への規制強化の重要性を訴えた。

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