NY州、公立大の授業料無料に 全米初
【ニューヨーク=平野麻理子】ニューヨーク州は3日、全米で初めて公立大学の授業料を無料にすると発表した。公立大学の無償化は2016年の大統領選で民主党候補を争ったバーニー・サンダース上院議員が公約として掲げていた。州議会の承認が得られれば今秋から実施する。米国では若者が進学のために借りる多額の学生ローンが社会問題になっている。
同州によると、初年度の対象は年収10万ドル(約1170万円)以下の家庭で、計画では18年に11万ドル以下、19年には12万5000ドル以下に拡大する。対象は最大で100万世帯にのぼり、州予算で賄う追加経費は年1億6300万ドル程度になる見通し。具体的な財源は明らかになっていない。
米国では大学や大学院の進学のため、学生自身がローンを組むのが一般的。これを利用すると平均3万~4万ドルの借金を背負って社会に出ることになる。3日に会見したニューヨーク州のクオモ知事は現状を「足にいかりをつけて、レースを始めるようなものだ」と批判し、「ニューヨーク州は解決に乗り出す」と述べた。
公立大学を無料にするのは16年の大統領選の民主党候補レースでヒラリー・クリントン氏と争ったバーニー・サンダース上院議員の目玉政策で、学生ローンに悩む若者を中心に人気を集めた。クリントン氏は当初実現性を疑問視していたが、本選で若者の支持を集めるために公約とした。
学生ローンの残高は年々増加している。16年7~9月期時点では約1兆3000億ドルで、10年前の3倍にまで膨らんだ。背景には大学の進学率の上昇や急激な学費の高騰がある。若者の間では学生ローンの返済が重荷となって結婚や出産、住宅購入にも遅れが出ており、経済成長の足かせになるとの指摘もある。
州内で評価が高い公立大学であるニューヨーク州立大学やニューヨーク市立大学の場合、学費は年6000ドルを超える。無償化の対象外となる私立大学の学費はさらに高額で、平均で年3万ドル程度とされる。
クオモ知事の3日の会見にはサンダース氏も同席し「革命的な案だ」などと称賛。その上で「ニューヨーク州が今年(無償化に)踏み出せば、多くの州が後に続くだろう」と予想した。
しかし、多額の財源が必要となるため、財政状況が厳しい州では実現は簡単ではない。さらに今月就任するトランプ次期大統領は学生ローン問題に関心が薄いとみられ、連邦レベルでの改革は難しい状況だ。