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米のTPP承認、狭き道

オバマ氏意欲も民主党内には反対論

【ワシントン=河浪武史】オバマ米大統領は2日の記者会見で環太平洋経済連携協定(TPP)に関し「大統領選が終われば真の利点がわかる」と強調し、早期に議会の承認を得ることに改めて意欲をみせた。11月の選挙後、議会に法案を出す考えだが、民主党は与党にもかかわらず支持基盤の労組の反対で賛成票がそろわない。大統領選候補2人の反対姿勢も強く、年内承認は狭き道だ。

オバマ氏は訪米したシンガポールのリー・シェンロン首相との共同記者会見で「米国はグローバル経済の一部であり、後戻りはできない」と述べ、強まる保護貿易主義に強く異論を唱えた。

TPPを政権のレガシー(遺産)としたいオバマ氏は、選挙後から自身が退任する来年1月までの「レームダック国会」で関連法案を審議し、承認を得たい考え。ただ野党・共和党だけでなく、与党・民主党議員すら賛成票がまとまらない。

ヒラリー・クリントン氏を大統領選候補に指名した7月25~28日の民主党大会。オバマ氏らの演説中に「反TPP」のプラカードを掲げる支持者が目立った。一方の共和党大会でも大統領選候補のドナルド・トランプ氏が「TPPは米産業を破壊する」と訴え、支持者の歓声を浴びた。

米国では大統領選と同時に上下両院の改選も予定され「各議員がTPPへの賛否を選挙で問われる」(全米商工会議所幹部)。民主党議員には全米自動車労働組合などが「自由貿易協定で米雇用が失われた」と激しいロビー活動を展開している。共和党議員には新薬のデータ保護の拡充を求める製薬業界などが再交渉を促して圧力をかける。

このため選挙後にTPP法案を提出しても「議会で賛成多数を得られる見通しが立たない」(米政府関係者)。昨年6月にはTPP法案の前哨戦といえる大統領貿易促進権限(TPA)法が成立した。オバマ氏に交渉権限を一任する法案だが、賛成票を投じた民主党議員はわずか2割。自由貿易推進派の共和党議員の8割が賛成し僅差で成立したが、今では両党の賛成派も切り崩しに遭う。

多数派・共和党の議会指導部は「TPP法案は賛成多数が見込めなければ審議にはかけない」と公言する。短期間のレームダック国会は、予算審議なども必要で「そもそも時間切れになるリスクが高い」(米当局者)。

「ヒラリーは私より大統領に適任だ」。オバマ氏は民主党大会でクリントン氏を称賛し、世論に強く支持を訴えた。借りを作った形のクリントン氏は同大会で「不公平な貿易協定をなくすために戦おう」と述べたものの、TPPには直接言及せず、年内承認というオバマ氏のレガシーづくりに配慮をにじませた。

だが、ライバルのトランプ氏は「TPPは最悪な協定だ」と強硬発言を繰り返す。大統領選を決する「激戦州」のオハイオ州やペンシルベニア州は鉄鋼業など不振産業が多く「反自由貿易論が票になる」(日本政府関係者)ためだ。オバマ政権下で議会承認に失敗すれば、次期政権下での道筋は全く見通せなくなる。

オバマ氏は「米国がTPPから離脱すれば、通商ルールの主導権は中国が握ることになる」と危機感を強めるが、反対派議員への同氏自らの説得が成否のカギを握る。

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