バングラデシュ テロ、日本人7人死亡 伊9人含め20人犠牲
JICA事業従事の1邦人救出
【ニューデリー=黒沼勇史】バングラデシュの首都ダッカの大使館街で1日夜(日本時間2日未明)に起きた飲食店襲撃事件で、日本人7人を含む20人の死亡が確認された。イタリア人9人、米国人1人も犠牲になり、ほかにインド人らも死亡したもようだ。現地の治安部隊の突入で日本人1人を含む13人を救出したが、日本人が巻き込まれた海外のテロ事件では、2013年のアルジェリア人質事件で日本人10人が犠牲になったのに匹敵する惨事になった。
菅義偉官房長官は2日夜、首相官邸で記者会見し、事件に巻き込まれた日本人7人が死亡したと発表した。犠牲になったのは写真や所持品などから国際協力機構(JICA)関連のプロジェクトに参加する企業に勤める男性5人、女性2人と判明。氏名については「家族の了解を得ていないので公表を差し控えたい」と語った。
政府は家族らの移送などのため、3日にも政府専用機を現地に派遣する方向で準備を進める。
バングラ軍の報道官は2日、人質となった外国人ら20人が襲撃犯に殺害されたと記者団に明らかにした。軍報道官は襲撃現場から民間人の遺体20体を収容したとし「大半が昨夜のうちに鋭利な物で惨殺された」との見方を示した。
日本政府高官も死亡が確認された日本人7人について「バングラデシュ政府から『治安部隊が突入した際の被害ではない。突入前にすでに殺されていた』との報告を受けた」と記者団に述べた。
同事件を巡り、中東の過激派組織「イスラム国」(IS)系ニュースサイトが犯行声明を伝えた。国際テロ組織アルカイダも犯行を主張する声明を出している。
JICAの北岡伸一理事長は2日夜に東京都内で記者会見し、事件に巻き込まれた日本人8人はJICAが支援するダッカの交通渋滞関連のインフラプロジェクトに従事していた関係者と明らかにした。2日午前に緊急対策本部を立ち上げ、現地に担当理事など2人を派遣したという。
JICAの委託事業を手掛ける建設コンサルティング会社「アルメックVPI」(東京・新宿)は2日、現地に滞在中の社員4人と連絡が取れていないと明らかにした。
4人はいずれも海外事業本部所属で30代と40代の男性2人と、20代、40代の女性2人。40代男性は治安部隊に救出された日本人とみられ、同社は社員の渡辺玉興さんではないかとみて確認を急いでいる。
同社と一緒にJICAの事業を手掛けていたコンサル会社「オリエンタルコンサルタンツグローバル」(東京・渋谷)は同社と関係会社の計3人の男性社員が死亡したと明らかにし、「片平エンジニアリング・インターナショナル」(東京・中央)も男性社員1人と連絡が取れていないという。
イタリアのジェンティローニ外相は2日、「イタリア人の死者9人を確認した」と発表。縫製産業のビジネスマンらで、女性5人、男性4人という。レンツィ首相はローマ市内で記者会見し「我々の生活を破壊しようとする狂信者には臆しない」と述べ、事件を強く非難した。
バングラデシュのハシナ首相は突入作戦を経た2日正午ごろ、テレビ放映された演説で、作戦によって人質13人が救助され、犯行グループのうち6人を殺害、1人を捕らえたと発表した。救出された13人のうち、1人は日本人、2人はスリランカ人とされ、残りの10人の国籍はわかっていない。
事件現場となったのはダッカ中心部で、商業施設や高級住宅地、各国大使館、外資系企業のオフィスも多いグルシャン地区。犯行グループが人質を取って立て籠もった飲食店は「ホーリー・アーティザン・ベーカリー」と呼ばれ、日本人外交官ら外国人も頻繁に利用する人気店だった。
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