トルコ、言論弾圧拡大 外交・資金調達に影響も

2016/11/3 0:21
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【イスタンブール=佐野彰洋】トルコのエルドアン政権による言論弾圧が左派や少数民族クルド人のメディアにも広がっている。大統領の権限強化を柱とする憲法改正の国民投票を来春に実施する案が浮上し、今のうちに政権に批判的なメディアを弱体化しようとする思惑がある。クーデター未遂事件後の非常事態宣言に乗じた強権措置の継続は、欧米などとの関係悪化や投資資金流出の形で政権に跳ね返る恐れもある。

10月31日早朝、最大都市イスタンブール。有力左派紙ジュムフリエトの風刺画家らの自宅に相次ぎ警察が立ち入った。容疑は「テロ支援」。11月2日までに編集局長ら15人が拘束された。

「我々は屈しない」。ジュムフリエトは翌日の1面記事で弾圧に抗議し、拘束されたコラムニストの担当欄を空白のまま発行した。

7月のクーデター未遂事件後、政府は非常事態宣言を発令した。同宣言に基づき、事件の黒幕と断定した在米イスラム教指導者ギュレン師支持メディアの一斉閉鎖に踏み切った。

しかし、最近では言論弾圧がギュレン派以外にも拡大している。政権と距離を置く世俗派の著名作家らを相次ぎ拘束したほか、クルド系の反政府勢力に近いとみた新聞社や通信社のほか、子供向けのアニメをクルド語で放送するテレビ局まで閉鎖した。

クルド人の多い南東部では、中心都市ディヤルバクルで10月下旬、共同市長拘束への抗議活動を抑え込もうと、インターネットへの接続が6日間にわたり遮断・制限された。現地の記者は原稿や写真を送信するため、車で数百キロメートルの移動を余儀なくされたという。

言論弾圧激化の背景には、エルドアン氏の悲願である大統領権限強化を柱とする改憲構想がある。右派野党が協力姿勢に転じたことで、来春の国民投票実施が政治日程に浮上。エルドアン氏の強権統治を批判する左派やクルド系の影響力を徹底的にそぐと同時に、支持基盤である右派世論の歓心を買おうとの思惑がにじむ。

「テロとの闘い」を名目とした権力基盤の強化は、政権にとってもろ刃の剣だ。明白な証拠なしにメディア弾圧や公務員の大規模な追放を続ける姿勢は、海外には「法の支配」の欠如と映るからだ。

「極めて憂慮すべきだ」。ドイツのメルケル首相は2日の記者会見で繰り返されるメディア弾圧を批判した。表現の自由を重視する欧米との溝は、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討や難民問題での協調に影を落とす。

国債格付けの投機的水準への転落や非常事態宣言の延長を受け、トルコでは通貨リラが対ドルで最安値を更新するなど資金流出に直面する。海外からの直接投資も落ち込んでいる。投資家心理の一段の悪化によって、資金調達が滞り、成長の足かせとなる恐れもある。

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