2019年2月19日(火)

ドイツが軍事貢献へカジ クルド勢力に武器、東欧派兵も

2014/9/3付
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【ベルリン=赤川省吾】独自の国外派兵などに慎重だったドイツが変わり始めた。1日に攻撃力の強い対戦車ミサイルをイラクのクルド人勢力に供与することを決めたほか、バルト3国などへの派兵も視野に入れ始めた。ウクライナや中東で緊張が高まるなか、欧州連合(EU)内の大国として、安全保障にも責任を持つ姿勢を鮮明にしている。

ドイツ連邦議会(下院)は1日、イスラム過激派の攻勢にさらされるイラクのクルド人勢力に武器を供与することを承認した。

「テロの拡散を黙って見過ごすことはできない」。メルケル首相は国会答弁でイラクへの武器供与を正当化。さらにクルド人勢力は「貧弱な装備で勇敢に過激派と戦っている」と持ち上げた。

ドイツが紛争の片方の当事者に軍事面で肩入れするのは極めて異例。しかも自動小銃など小火器だけでなく、与党内にも慎重論のあった対戦車ミサイルなど強力な兵器も渡す。クルド人勢力の戦闘員はドイツ国内で訓練するという。

公共放送ARDの8月29日の世論調査では国民の6割が武器供与に反対した。クルド人勢力が一枚岩ではないことから野党は「武器がテロ組織に流出する」と指摘した。だが政権を支える二大政党は数の論理で反対論を押し切った。

実はドイツは米ロに次ぐ世界3位の武器輸出国。イスラエルやアルジェリアへの出荷実績もあるが、表向きは「紛争地への供給は自粛する」と言い続けてきた。今回、そのタガが名実ともに外れ、紛争地に軍事介入するのを控えてきた戦後ドイツの政策が変わりつつあることを裏付けた。

欧州域内でも「武力での貢献」を探る。独紙フランクフルター・アルゲマイネによるとドイツ連邦軍を来年からバルト3国などに派兵する検討を始めた。ロシアの脅威が高まる東欧で、ドイツが防衛の一翼を担う構想だ。

北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を控え、周辺国との調整を進めているフシがある。ポーランド国防省のソニタ報道官は2日、日本経済新聞に同国などでの演習に「ドイツ軍の参加を排除しない」と語った。

第2次大戦への反省から戦後ドイツは経済面での貢献に専念し、安全保障分野での発言は控えてきた。方針が変わったのには2つの理由がある。

ひとつは域内の政治力学の変化。外交が得意のフランスは内政が混迷し、英国は欧州統合に背を向ける。域内の「ドイツ1強」が固まり、欧州の盟主としてあらゆる政策分野で責任を負わざるを得なくなった。

ふたつ目はグローバル化。例えばドイツには約100万人のクルド系住民がいる。学生や外国人労働者、難民などとしてドイツに移住。イスラム過激派に参加する若者がいる一方で、ドイツに溶け込んで政財界にパイプを持つ人もいる。もはやイラク情勢はドイツと無関係ではない。

周辺国もドイツの変化を特に気にする様子はない。それどころか東欧はドイツ軍の派兵を前向きに受け止めている。

「時代は変わった。もはや戦後ではない」。冷戦下で東西のデタント(緊張緩和)に奔走した自由民主党(FDP)の元幹部は、こう日本経済新聞に語ったが、その言葉には戦争の贖罪(しょくざい)を十分に果たしたとの自信がにじむ。

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