EU、トルコへのビザ免除問題で手綱さばき苦心

2016/7/5 11:40
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欧州への移民・難民流入問題で、欧州連合(EU)がトルコとの交渉に頭を悩ませている。トルコの協力で同国経由の密航者は激減したが、見返りにトルコが求めるビザ免除をEUは実行できていない。トルコ国内の人権侵害の懸念が消えないからだ。下手に譲歩すれば反移民を掲げるEU域内の極右勢力を勢いづかせかねず、難しい手綱さばきを迫られている。

「トルコはテロとの戦いに直面している。EU側の要求は有益ではない」。6月末、トルコのチャブシオール外相はブリュッセルで2016年上半期のEU議長国オランダのクーンデルス外相らと難民対策で協議。会談後の共同記者会見でこう語った。

トルコはテロ対策のための「反テロ法」を政権維持に使っているとの批判も浴びる。都合の悪い報道や政権批判をテロ支援とみなし、ジャーナリストらが逮捕されている。EUは同法の修正を求めているが今回の会談でもテロの頻発を理由にトルコは応じず、議論は平行線をたどった。

両者は3月、トルコからギリシャへの密航者をトルコに強制送還する新枠組みに合意。昨年10月には1日約7千人もいた同ルートの難民らの数は今年5月時点で「1日50人以下」(欧州委員会)まで減った。

見返りのはずだったEU域内を旅行するトルコ国民のビザ(査証)免除時期の6月末への前倒しは未実現。これがトルコをいらだたせている。EUが人権問題を盾に約束を守らない場合、合意破棄の可能性もちらつかせる。EUは合意破棄は避けたい。だからといってトルコに甘い顔をみせれば、移民急増に不満を募らせる域内の反EU派が猛反発するのは必至だ。

「(トルコ)国籍取得の機会を与える」。トルコのエルドアン大統領は2日、南部キリスでシリア難民に語り掛けた。トルコ国内には約270万人のシリア難民が暮らす。欧州では難民にテロリストが紛れ込んでいるとの懸念があり、EUとトルコのビザ免除交渉が一段と難航する可能性もある。

英国民投票で離脱派が勝ったのは「EUからの移民急増に対する国民の大きな懸念があった」(キャメロン英首相)ためだ。英国に続けとばかり、EU離脱の連鎖が起こりかねない。トルコとの交渉はEU存続にも関わってくるといっても大げさではない。(ブリュッセルで、佐野彰洋)

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