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廃炉効率化へ新ルール 米原子力規制委員長に聞く

米原子力規制委員会(NRC)は廃炉プロセスの効率化や透明性向上のための新しいルールを作る。このほど来日したスティーブン・バーンズNRC委員長らが明らかにした。経験豊富な現役の原子炉の点検などに比べ、廃炉に移行する炉を対象としたルールは十分に整っていないという。米国の取り組みは、日本の老朽原発の廃炉手続きの参考になりそうだ。

バーンズ委員長は2015年1月に就任し、先週初めて来日した。NRCと日本の原子力規制委員会が都内で共催した廃炉に関するワークショップに参加し、日本経済新聞などの取材に応じた。

シェールガス革命による天然ガス価格の下落などを受け、米国では経済性の観点から廃炉の決定が相次いでいる。NRCは今後、廃炉計画の申請がさらに増える可能性があるとみて、承認に至る手続きなどを洗い直す。バーンズ委員長は「日本の原子力規制委員会とも、互いの経験を共有しながら廃炉に対応したい」との考えを示した。

米国では事業者が廃炉を進める際に(1)機器や敷地から直ちに放射性物質を除去する(2)汚染された構造物などを何年か管理後、解体・除染する(3)コンクリートなどに汚染構造物や機器を閉じ込める――の3方式から選ぶ。現在、廃炉プロセスに入っている19基中、14基が2番目の方式だ。3番目は一つもない。

今後の廃炉の増加に備えて、2019年をメドに「廃炉プロセスを合理化し、透明性を高めることに焦点を合わせてルールを作る」という。既存の安全基準や放射線基準は改定しないが、使用済み燃料の維持管理や安全性を確実にするための人材配置などで満たすべき条件を、ルールに加えることを検討している。

透明性に関しては、NRCは従来も廃炉申請があると住民らを対象に公開の話し合いの場を設け、検査結果なども公表してきた。法的義務はないものの効果的な取り組みもあり、ルールに含める可能性があるという。

日本の原子力規制委員会は米国のような住民参加型の説明会は開催していない。ワークショップに出た田中知委員は「長年の慣習や経験を踏まえて実施されている米国のやり方を、そのまま日本が取り入れればよいわけではない」と指摘する。ただ、廃炉作業の安全性確保のための検査や廃棄物への対応などは「参考になる点も多い」と語った。

NRCのバーンズ委員長は来日中に東京電力福島第1原発と、日本の原子力規制委が3、4号機に再稼働の「合格証」を出した関西電力高浜原発(福井県)を視察した。福島第1の廃炉作業の進捗状況について、「通常の廃炉ではないような破壊された建物や溶け落ちた核燃料(デブリ)の除去という難題に直面しながらも、適切に進んでいる」との認識を示した。

(編集委員 安藤淳)

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