2018年11月15日(木)

ノーベル生理医学賞に大村智氏 熱帯病薬開発で貢献

2015/10/5付
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【パリ=竹内康雄】スウェーデンのカロリンスカ研究所は5日、2015年のノーベル生理学・医学賞を、寄生虫による熱帯病の治療薬の開発に貢献した北里大学の大村智特別栄誉教授(80)と米ドリュー大学のウィリアム・キャンベル名誉研究フェロー(85)、中国中医科学院の屠●●(くちへんに幼、ト・ユウユウ)終身研究員兼首席研究員(84)に贈ると発表した。

笑顔で記者会見する大村智北里大学特別栄誉教授(5日午後、東京都港区)

日本のノーベル賞受賞者は昨年の名古屋大学の天野浩教授らに続いて2年連続で、23人目(米国籍を含む)。生理学・医学賞は理化学研究所の利根川進脳科学総合研究センター長、京都大学の山中伸弥教授に続き3人目となる。

カロリンスカ研究所は授賞理由として「寄生虫による感染症の治療を根本的に変えた」と説明した。大村氏とキャンベル氏はアフリカなどの風土病で感染者の2割が失明するといわれるオンコセルカ症(河川盲目症)や足などが肥大して歩行が困難になるリンパ系フィラリア症(象皮症)、屠氏はマラリアの画期的な治療薬をそれぞれ開発した。

大村氏は5日、北里大学で開いた記者会見で「微生物の力を借りて、何か役に立つことができないか考えながら仕事をしてきた。私がこの賞をもらっていいのかなという感じだ」と喜びを語った。

大村氏は1970年代、国内の土壌にすむ細菌が作りだす物質に注目。数千の菌から寄生虫の駆除薬として有望な50種類を特定した。キャンベル氏は大村氏が見つけた菌が作る物質によって、家畜の寄生虫を1回の投与でほぼ完全に駆除できることを突き止めた。米製薬大手のメルクが80年代初めに動物用の駆虫薬「イベルメクチン」として商品化した。

その後、イベルメクチンは動物だけでなく人間の寄生虫の駆除にも使えるとわかった。特にオンコセルカ症に対して極めて効果が高く、症状の悪化を防いだり、感染を防いだりできるようになった。

世界保健機関(WHO)はメルクから無償提供を受け、80年代後半に薬剤の配布を始めた。これまでに延べ10億人が飲んでおり、多くの人々を失明の危機から救った。WHOは20年代には撲滅できると予想している。イベルメクチンは他の寄生虫やダニによる感染症の薬としても広く使われている。

一方、屠氏はマラリアの効果的な治療薬の開発が評価された。中国国籍の科学者が自然科学系のノーベル賞を受賞するのは初めて。

授賞式は12月10日にストックホルムで開く。賞金800万スウェーデンクローナ(約1億2000万円)は屠氏が半分、キャンベル氏と大村氏が残りを分け合う。

 大村 智氏(おおむら・さとし) 1935年7月12日山梨県韮崎市生まれ。58年山梨大学卒業、東京都立墨田工業高等学校で夜間部の教諭を5年間務めた。68年北里大学助教授。75年北里大教授。90年北里研究所所長。2013年から北里大特別栄誉教授。97年ロベルト・コッホ・ゴールドメダル、14年にガードナー国際保健賞など国際的な医学賞を多数受賞している。絵画の収集家としても知られており、女子美術大学の理事長も務めた。

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