iPS創薬 実用段階 京大が初の治験へ、難病向け開発素早く

2017/8/2 0:31
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 医療に革新をもたらすiPS細胞を新薬の開発に使う「iPS創薬」が実用段階に入った。京都大学iPS細胞研究所の戸口田淳也教授は1日、筋肉の中に骨ができる難病の治療薬候補を発見し、臨床試験(治験)を9月以降に始めると発表した。iPS細胞で見つけた候補薬を実際の患者に試すのは世界で初めて。再生医療と並ぶ応用が大きく前進し、iPS細胞研究は新たな局面を迎えた。

 京大が治療薬を目指すのは「進行性骨化性線維異形成症」。筋肉などの組織の中に骨ができる難病で、国内の患者は約80人とされる。有効な治療薬はない。

 京大病院の審査委員会は既に治験の計画を承認した。京大は医薬品医療機器総合機構(PMDA)への届け出も終えた。すべての手続きを経た後、6歳から60歳未満の男女計20人で安全性や効果を確かめる。京大のほか、東京大、名古屋大、九州大でも実施する計画だ。

 iPS細胞は体のあらゆる細胞に育つ万能細胞だ。京大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授が2006年に世界で初めてマウスで、翌年にヒトの細胞で作製した。皮膚や血液の細胞に遺伝子を入れ、時計の針を巻き戻すようにそれぞれの細胞になる前の状態に戻す。人の臓器や組織の細胞が自在に作れる。

 応用は再生医療と創薬が2本柱だ。病気やけがで傷んだ体を治す再生医療の試みが先行したが、初の治験入りで創薬でも大きな可能性を示した。山中教授は1日、「創薬研究が活発になり、様々な難病に対する新しい治療法の開発につながることを期待している」とコメントした。

 研究チームはiPS細胞の特徴を存分に生かした。患者から作ったiPS細胞は、病気の状態を正確に再現した。約7000種類の物質を調べ、病気の進行を抑える候補を効率よく絞り込んだ。

 一般に薬の開発では、ネズミなどで人の病気を再現し、発症の仕組みや薬の候補物質を突き止める。ネズミで効いても人で効果がなく、開発が行き詰まることも度々だ。

 iPS創薬では、患者の細胞を使い、試験管の中で病気を観察できる。患者に見立てた細胞で多数の物質を試し、治療薬の候補を絞るスピードは桁違いに速い。創薬の成功率も上がる見通しだ。戸口田教授は「予想外の速さで候補薬が見つかった」と語った。

 今回、臓器移植後の免疫抑制剤に使う「ラパマイシン」が最有力候補と分かった。既存の薬が新薬候補に挙がるのも、iPS細胞を使って約7000種類に及ぶ物質をふるいにかけられたためだ。既存薬ならば、実用化への道筋を立てやすい。

 iPS創薬は、画期的な新薬が生まれにくい現状を打破できるとの期待が大きい。

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