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日銀、景気重視の「現状維持」 脱デフレは持久戦色濃く

(更新)

日銀の黒田東彦総裁は20日午後3時半から金融政策決定会合を受けた記者会見に臨んだ。同日の決定会合で日銀は政策の現状維持を決めた。春先の値上げの鈍さを反映し、物価見通しを引き下げたが、景気回復の広がりに焦点を当て、追加緩和を見送った。必要なら果敢に追加緩和に動く「短期決戦」の色合いは薄れ、「持久戦」のスタンスが一段と明確になっている。

金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(20日午後、日銀本店)

日銀は政策の現状維持の発表と同時に、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」も公表した。2017年度の消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く)の上昇率見通しは3カ月前の1.4%から1.1%に下方修正し、18年度も1.7%から1.5%に引き下げた。

引き下げた理由はこの数カ月、日銀が思い描いていた以上に企業経営者が値上げに慎重だったためだ。値上げすれば売り上げが落ち込むとの懸念は根深く、賃上げ圧力が強まってきても値上げではなくコスト削減で吸収しようとする企業が多い。

展望リポートでは「価格設定スタンスがなお慎重」と評価し、2%の物価目標達成時期を18年度ごろから19年度ごろに先送りした。

こうした事態は日銀が転換を狙っている「デフレマインド」そのもの。黒田東彦総裁が就任した当初の2013~14年ごろなら、追加緩和が検討されてもおかしくなかった事態だ。だが今回は会合時間も短く、追加緩和の必要性が深く議論された形跡はない。

現状維持としたのは「いずれは物価も上がるはず」との見立てをより強めているからだ。景気は日銀のシナリオに沿って回復の度合いを徐々に強めており、成長率見通しは上方修正した。「企業のコスト削減も長い目で見れば生産性の上昇を通じて物価上昇要因となる」(幹部)。物価上昇への環境は整っており、「モメンタム(推進力)は維持されている」と判断した。

そもそも追加緩和の手段は限られている。長短金利の深掘りは金融機関の収益圧迫など副作用が大きく、国債購入の増額も難しい。企業や市場からの追加緩和期待もほとんどなく、政策委員のなかでは「サプライズを起こしてまで追加緩和する状況ではない」との思いが共有されていた。

日銀は昨年秋以降、展望リポートの末尾で「(物価上昇の)モメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う」としてきた。言い換えれば「モメンタムが維持されていれば追加緩和はしない」ということでもある。そして今回の展望リポートをみる限り、そのモメンタムの判断は簡単には崩れそうにない。

今後も海外経済や金融市場でよほどのショックが起きない限り、追加緩和の選択肢は浮上しない。そう予感させる会合だった。(後藤達也)

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