黒田総裁、「円安けん制」発言釈明 為替市場には不透明感
日銀の黒田東彦総裁が16日の参院財政金融委員会で、円安けん制とされた10日の発言について「円安を望んでいないとか円安にならないと言ったわけではない」と釈明した。外国為替市場では発言の真意について見方が分かれ、不透明感がくすぶり続けている。
総裁発言を受け16日の東京市場で円相場は50銭ほど円安・ドル高が進み、一時1ドル=123円81銭まで下落した。円の総合的な価値を示す実質実効為替レートが「ここからさらに円安に振れていくことはありそうにない」と発言した10日には2円ほど急騰しており、下げ幅は相対的に小さい。
発言についてJPモルガン・チェース銀行の佐々木融債券為替調査部長は「10日の急騰は過剰反応だった。総裁の発言の趣旨は全く変わっていない」と話す。「円相場の水準を具体的に評価したわけではなく、円売り安心感につながる」(みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト)との声もあった。
ただ日銀が円安の進行に警戒感を持っているとの見方も残っている。シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは「円安を積極的には歓迎しないというのが総裁の本心だろう」と読む。三菱東京UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは「10日の『円安けん制』発言を全否定したわけでなく、幅広い通貨に対する円安には警戒感を持ち続けている」と指摘し、「円の下げ余地は限られる」とみている。