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専門書の電子化を(十字路)

一念発起して蔵書の処分を始めた。洋書の場合、かなり古い専門書の類いでも電子書籍化されているのに気づいたためだ。感覚的には8割程度が電子化されているのではないか。いつでも安価に再入手できるので、処分に伴う心理的抵抗感がなくなった。

一方、和書は絶望的だった。過去の専門書の電子化は進んでおらず、その基準では全く処分できなかった。

最近出版された専門書についても、状況はあまり変わらない。我々が経営者向けに提供するデジタル戦略の講座では、その名に恥じないように教材の完全電子化を試みたが実現できなかった。原書は電子化されているのに、翻訳は紙でしか提供されない。個別に出版社と交渉しても、権利関係とかコストを理由に、多くは電子化に消極的である。

専門書の謝辞には必ずと言って良いほど「出版情勢が大変厳しいなか」という文言が登場する。そうだとすれば、学会誌などと同様に専門書の出版は電子書籍を基本とするぐらいの発想の転換が必要ではないか。

直接的な書籍作成コストはともかく、どこかの研究室や図書館に収蔵されてしまった発行部数が少ない資料を探索して入手する手間の削減だけでも、電子化の効果は大きい。保管コストがほとんどなくなることや、森林資源の保全効果まで考えたら、社会的メリットは絶大だろう。

広く一般的な知的活動の生産性向上という観点からも、電子化の促進が望まれる。英語なら、必要に応じて自らのパソコンから世界中の知的財産へアクセスできるようになっている。日本語でそれができないのは、知識経済化が進展する現在、大きなハンディである。

紙の書籍の良さを完全に否定するわけではないが、専門書の電子書籍化を担うベンチャー出版社でも登場して解決してくれないものだろうか。

(野村マネジメントスクールフェロー遠藤 幸彦)

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