LIXILグループは21日、中国で水栓金具を手掛けるドイツ子会社、ジョウユウが破産手続きの申し立てを検討していると発表した。破産した場合、410億円の持ち分法投資損失が発生する可能性があるという。同社の財政実態を調べたところ、財務報告と大きくかけ離れていることが判明した。
日本企業の海外M&A(合併・買収)が加速しているが、財務実態の把握など企業統治の強化が課題となりそうだ。
LIXILは2014年1月、ジョウユウの親会社である独水栓金具大手グローエに40%余りを出資。今年4月にグローエ株を追加取得して子会社化したのに伴い、ジョウユウもLIXILの子会社になった。
損失の内訳は株式関連が250億円、債務保証が160億円としている。「他にも費用が出てくる可能性があり精査中」(LIXIL)としており、損失がさらに拡大する懸念もある。
ジョウユウは水栓金具や衛生陶器を製造し、中国で「中宇」というブランドで展開している。財政状態について特別監査を実施した結果、財務報告が実態より過度に良く見せられている可能性があることが判明した。
ジョウユウへの特別監査入りを理由に、LIXILは7日に予定していた15年3月期決算の発表を延期した。前期の連結純利益は前の期比45~31%減の245億~310億円を見込んでいた。
LIXILの藤森義明社長は21日午前、日本経済新聞社の取材に応じ「ガバナンスを強化して再発防止に努めたい。海外展開を加速する方針は変わらない」と話した。
LIXILは国内市場の先細りを見越し、矢継ぎ早に海外M&Aを手掛けてきた。グローエ買収に先立つ13年には、米衛生陶器大手アメリカンスタンダードを約530億円で傘下に収めた。
事業展開する国は約150に及ぶが、海外収益は伸び悩んでいる。ジョウユウの損失発覚で海外戦略の見直しを迫られる可能性もある。
21日午前に独子会社が破産申し立てを検討すると開示すると、LIXIL株には売りが集まった。前日比の下げ幅は一時4%に達した。