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小売り業績二極化 セブン最高益、イオン大幅減益

3~11月、「脱デフレ」で品質競争に

小売り各社の業績が二極化している。9日までに出そろった主要企業の2014年3~11月期決算は、最大手のイオンが大幅な減益となり、セブン&アイ・ホールディングスは小幅ながら営業利益が過去最高となった。消費増税の逆風で消費者の選別が厳しくなり、価格よりも品質が売れ行きを左右する。質の高い商品で価格を引き上げた「脱デフレ型」の企業が増益を達成した。

同日記者会見したイオンの岡崎双一専務執行役は「価格政策など増税後の対応を失敗した」と説明した。イオンの連結営業利益は493億円と前年同期から48%減少。不振の原因は食料品や衣料品などを幅広く扱う総合スーパー事業だ。イオンリテールやダイエーは営業赤字で、総合スーパー事業全体では289億円の部門赤字(前年同期は65億円の黒字)だった。

イオンの基本的な戦略は価格訴求だ。イオンはダイエーと共同で生活必需品約100品目を値下げするなど販売促進に努めたが、客足は戻らなかった。

セブン&アイは好調を維持している。けん引するのはコンビニエンスストア事業だ。増税後に品質重視の戦略を掲げて、独自商品の大半を刷新した。国内コンビニの既存店売上高は、14年11月まで28カ月連続でプラスを維持している。

高め商品が業績けん引
セブン&アイ食材の質を上げた弁当
ニトリHD品質高めたソファ、マットレス
良品計画体にフィットするソファ
ABCマート高機能ウオーキングシューズ
イズミシニア向けの和牛や鮮魚
マルエツ銘柄和牛などの生鮮食品

総合スーパーのイトーヨーカ堂は既存店が苦戦し、営業損益は25億円の赤字(前年同期は37億円の黒字)となったが、好調なコンビニが補って、全体の連結営業利益は0.1%増とわずかながら前年同期を上回った。

小売業の経営者の多くは「増税後に消費者の行動が変わった」と話す。安いだけでは商品を買わなくなり、品質を伴った値ごろ感を求めている。品質に納得すれば多少、値段が高くても購入する消費者は多い。セブン―イレブン・ジャパンのいれたてコーヒーは今や年間7億杯を売る。実は昨年10月にコーヒー豆の薄皮を取り除くなど製法を刷新し、すっきりとした味に変えた。具材を追加したり食材の質を上げたりしたチルド弁当は、販売価格を上げても売れ行きは好調だ。

消費者はこうした商品を目当てに来店する。それが客単価の上昇と客数の増加につながり、逆風下でも業績を押し上げた。「消費が飽和する中で質を追求したことが市場に受け入れられた要因」とセブン&アイの鈴木敏文会長は話す。

良品計画は独自開発のソファやカシミヤセーターの販売が伸びた。スーパーのマルエツは値ごろな青果を増やして来店を促し、銘柄和牛など高品質で価格が高めの商品の販売につなげた。

高島屋J・フロントリテイリングなどの百貨店は訪日外国人客の増加が追い風となり、経常増益を維持した。高島屋の木本茂社長は「外国人客の需要は爆発的に伸びている」と話す。

小売業83社の3~11月期業績を集計したところ、経常増益となった社数は46社と全体の55%だった。消費意欲が伸び悩む中でも半数以上が増益を確保している。ドイツ証券の風早隆弘シニアアナリストは「企業が売りたい物を売っていてはだめだ。消費者に商品の価値や買う理由を提示できている企業が業績を伸ばしている」と指摘する。

◇    ◇

商品戦略きめ細かく 小売り大手、見直し急ぐ

全国に店舗網を持つ小売り大手の強みだった大量仕入れと大量販売は現在、多様化した顧客の嗜好に十分に応えることができなくなっている。消費増税後の個人消費の回復がもたつくなか、各社は地域や年齢などで顧客層を絞り込んだ商品開発で業績の立て直しを急いでいる。

一括発注によるコストの低減を狙い、大手小売りでは本社が仕入れ機能の大半を担っている。そうして実現する全国一律の品ぞろえと価格の安さがこれまでは集客力につながっていた。しかし、高齢化に加え、若者が地元を離れない"土着化"が進む現在、消費者には「地産地消」の考えが浸透。画一的な品ぞろえは競争力を失いつつあり、地元のニーズに機敏に対応できる地域スーパーの後じんを拝している。

こうした反省から、各社は商品戦略の見直しに動いている。セブン&アイ・ホールディングスは全国に商品調達などの担当者を配置し、2017年度中に地域限定商品の比率を、現在の1割から5割に引き上げる計画を打ち出した。イオンも地域の実情に応じたプライベートブランド(PB=自主企画)商品を開発する体制に改める。

既に成果が出ている事例もある。ニトリホールディングスは、購買力の高い中高年層に照準を絞った。品質や機能を重視した商品開発を進め、1年前より1.5~2倍の価格帯の品ぞろえを拡充した。百貨店は富裕層向けにきめ細かな対応をする外商部門が好調だ。高島屋では14年9~11月期の外商売上高が前年同期に比べ4%増え、収益のけん引役となっている。

ただ、実店舗の品ぞろえは膨大な品目を扱うインターネット通販に比べれば見劣りする。ネット通販が不得手とする生鮮品の取り扱いや独自商品の開発を通じ、いかに魅力を高められるかが顧客を取り込むカギになる。

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