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「満足」の先の課題(十字路)

内閣府が発表した今年の「国民生活に関する世論調査」によると、回答者の73.9%が現状の生活に「満足」「まあ満足」と回答し、過去最高となった。雇用情勢が改善したとはいえ、名目賃金の上昇率は低く、巨額の政府債務や社会保障などの問題もある。その中で結果に意外感を持った人も多いだろう。

政治の視点からは国民の満足度が向上することは大きな成果だが、この結果に「満足」してよいのだろうか。まず考えるべきは、将来を担う若者の意識だ。満足度を年齢別でみると、18~29歳が79.5%と最も高い。この層は回答率が低く、満足度の高い若者が率先して回答しているかもしれないが、それにしても多くの若者が現状に満足しているようだ。

一方、ややデータが古いが、内閣府発行の2014年版「子ども・若者白書」を見てみよう。若者意識の国際比較では将来への希望や自己肯定感、未知のものに対する意欲的な取り組みなどの項目で、日本の若者の肯定的な回答率は他の先進国に比べ低い。内向的な日本の若者の姿が浮かび上がる。

高い満足度自体はよいが、前向きな意識や行動が伴わなければ、現状に安住してしまう。こうした土壌が今の日本にあることをしっかり認識し、対応する必要があろう。

また、いま何に満足しているかも考える必要もある。マズローの欲求5段階説でいえば、いまは「生理的」や「安全」「社会的」という基礎的欲求が満たされている段階だ。

それは重要だが、ここで止まらず、成熟した先進国としてさらに高次の「承認」や「自己実現」欲求を満たせる社会を目指すべきだ。そこに日本の新たな発展モデルもあるのではないだろうか。

いまの「満足」の先には重要な課題がある。そのことを忘れてはならない。

(三菱商事 調査部長 武居秀典)

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