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世界企業 日本の立ち位置(3)労働分配率、日米欧で低調

最高益なのに賃上げに慎重な日本企業。企業の生む付加価値のうち従業員の取り分を示す労働分配率は、2011年をピークに低下が続く。米国も08年の金融危機以降、低下基調にある。グローバルな企業間競争が強まるなか、ロボットを使った自動化や非正規雇用の拡大、株主還元策を重視した経営などが影響し、人件費は構造的に上がりにくくなっている。

労働分配率の水準を国際比較するため、経済協力開発機構(OECD)の統計を基に企業の生み出した付加価値のうち労働者の所得がどれくらいあるかを日本経済新聞社が調べた。日本の労働分配率は11年に81%のピークを付けて以降、下げ止まらない。15年は74%だった。企業業績は大幅に改善しているが、従業員の取り分は収益の伸びに追いついていない様子が浮かび上がる。

人件費を見てみると、15年は平均395万円と、11年に比べ2%増にとどまった。一方、みずほ総合研究所によると、同じ間に日本企業のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)に受取利息、配当などを加えた付加価値は、60兆円から93.2兆円に膨らんだ。

12年末の安倍政権発足に続き、13年4月に日銀が異次元緩和を決め円安・株高が進行。足元でも収益環境は底堅い。今年度も日本企業は全体で最高益となる見通しだが、みずほ総研の高田創チーフエコノミストは「労働分配率の低下は世界的に続きそうだ」という。

米国でも労働分配率は下落傾向をたどっている。金融危機のあった08年に83%だったのが、15年は78%まで低下。欧州連合(EU)は72%前後で停滞している。

日米欧の労働分配率が低迷しているのは、経済の成熟化と関係が深い。金融、サービスなど非製造業の比率が上昇。製造業でもIT(情報技術)やロボットを活用して多くの仕事が人手から機械に置きかわり、賃金が伸びにくくなっている。

企業がコーポレートガバナンス(企業統治)を重視する経営を進めている影響もある。労働分配率が下がる一方で、株主への利益還元は右肩上がりが続いているからだ。

野村証券によると、ゼネラル・モーターズ(GM)やコカ・コーラなど米国の主要な500社は昨年1年間で自社株買いと配当を合わせて総額約9800億ドル(約108兆円)を株主に還元した。アップルやマイクロソフトといったIT大手にとどまらず、金融や製造業のオールドエコノミー企業も株主価値の向上に余念がない。

日本国内では非正規雇用の拡大など、正社員以外の働き方が広がっている。同時に労働組合の組織率は過去最低の2割弱まで下がり、正社員を中心に物価上昇率や同業他社をにらみながらの賃金交渉は変わりつつある。春季労使交渉のテーマは目先の賃上げから働き方改革に移ってきた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の斉藤勉エコノミストは「企業収益が高まり、賃金も上昇するサイクルが必要だ」と話す。足元では賃金の伸び悩みが消費を抑え、分配率をさらに押し下げる負の循環が目立つ。

インフレ圧力が高まらなければ、主要国の金融政策にも影を落とす。米国では利上げがあっても、「ペースは当初の見通しよりも緩やかになりそうだ」(国内証券)との見方は多い。日本国内では依然として金融緩和の出口が見えない。

行き場を失ったマネーが株式市場に流れ込み、世界で「ゴルディロックス」(過熱も冷え込みもない適温)相場が長期化する要因になっている。

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