年金抑制、8年遅れ始動 マクロスライドを初適用

2015/1/30付
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厚生労働省は30日、公的年金の支給額の伸びを賃金や物価の上昇分より抑える「マクロ経済スライド」を初めて発動することを決めた。2015年4月からの年金受取額は14年度より0.9%増にとどまる。年金財政の悪化を食い止める狙いだが、発動時期が当初計画から8年も遅れており、保険料を支払う現役世代に負担のしわ寄せが及んでいる。

公的年金にはもともと賃金や物価の上昇分を毎年反映して支給額を増やす仕組みがある。14年の上昇分は2.3%だったため、これまでなら夫婦2人のモデル世帯の年金額も同率増えて、15年度は月22万4千円ほど受け取れるはずだったが、マクロスライドの実施で2千円ほど差し引かれる。また過去の年金のもらい過ぎを解消するため、さらに0.5%減り、年金額は月22万1507円にとどまることになった。

マクロスライドの導入を決めたのは、100年間にわたって現役世代の所得の50%以上の年金を受け取れる「100年安心」をうたった04年だ。年金財政が大幅に悪化するのを避けるため、一定の調整率を決めて年金の支給額を差し引いて伸びを抑える仕組みにした。

ただマクロスライドは物価が下落しているデフレ環境下では使わないルールがあったため、当初計画の07年度からの発動は大幅に遅れて実施まで8年もかかった。そのため年金の支給額は、現役世代の収入と比べて62.7%と高止まりしている。マクロスライドを予定通り07年度から適用していれば、54%に抑制できる見通しだった。

そのため公的年金は保険料の支払額と受給額にギャップが生じ、世代間格差が広がっている。14年時点で65歳の高齢者の年金受取額は、現役世代の収入の62.7%あるが、同30歳の場合は年金を受け取れるようになっても現役世代の収入の50.6%しかもらえない見込みで不公平感がある。

「100年安心プラン」はスタートから出遅れつつあるが、もう一段の年金改革の機運は乏しい。公的年金は5年に1度、財政状態を見直すことになっており、14年がその年だった。厚労省は現在は60歳までとしている保険料の支払期間を65歳まで5年間延ばす案を検討したが、政府内に慎重論もあり通常国会への法案提出は先送りする。

物価が下落するデフレ環境でもマクロスライドを適用する案もあったが、これも完全導入は見送る方向だ。公的年金の財政は株価の上昇などで運用益があり、足元では悪化に歯止めがかかっている。ただ長続きする制度にするにはもう一段の改革議論が必要だ。

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