雇用改善 正社員も 4月求人倍率、最高の0.97 - 日本経済新聞
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雇用改善 正社員も 4月求人倍率、最高の0.97

厚生労働省が30日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.48倍と、バブル経済期の水準を超えた。1974年2月以来、43年ぶりの高さで、空前の「売り手市場」だ。労働市場の逼迫感は強く、正社員に絞った有効求人倍率も初めての1倍超えが視野に入る。企業が長期的な人材確保を意識して正社員の採用を積極化し、賃上げに勢いがついてくるとの見方も出ている。

4月の正社員の有効求人倍率は0.97倍と1に近づいた。統計を取り始めた2004年11月以降で最高だ。

ここ数年の人手不足は主に女性や高齢者らパートタイム労働者が補ってきた。総務省の労働力調査によると、12年から16年にかけて非正規社員は11%増えたが、正社員は0.7%の伸びにとどまる。非正規雇用の賃金水準は相対的に低いため、非正規の増加が賃金に与えるインパクトは弱い。

実際、消費の増加に結びつきやすいとされる所定内給与の伸びは、12年から16年で平均して前年比0.5%止まり。バブル期には給与が毎年4%前後伸び、雇用改善と給与増が消費拡大につながる好循環が起きていたのとは異なる姿だ。

ただ、グローバルな景気回復などを追い風にここへきて正社員の採用は堅調に増加しており、専門家の間では雇用環境の改善で賃金の上昇が加速し始める「臨界点」にも関心が集まっている。

4月の正社員数は3400万人と前年同月より14万人増えた。非正規社員の伸び(33万人)よりは小さいものの、2年5カ月連続で前年を上回った。スーパーなどでパート社員らを正社員に切り替える動きが相次いでいることも背景にある。

正社員の求人が求職を上回って有効求人倍率が1倍を超える状況になれば、正社員がよりよい待遇を求めて他企業へ転職する動きが加速する。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎浩氏は「企業は社員をつなぎとめるため、ボーナスや福利厚生も含め正社員の待遇改善に積極的に取り組むだろう」とみる。

総務省が同日発表した4月の完全失業率(季節調整値)は2.8%と、前月と横ばい。求人があっても職種や年齢などの条件で折り合わずに起きる「ミスマッチ失業率」は3%台前半とされる。3%割れは働く意思のある人なら誰でも働ける「完全雇用」に近い状態にあり、労働の需給はタイトになる一方だ。

一部の業界ではパート労働者が年金などの社会保険料を負担しなければならなくなる年収106万円の壁を意識して労働時間を抑え、雇用逼迫に拍車がかかっている。需要はあるのに十分な労働力を補えないためサービスを供給できず、「成長の壁」に突き当たる企業も増えてくる。

もっとも人手不足感は業種でばらつきが大きい。無期雇用者の求人倍率をみると、介護関連、建設・採掘、輸送・機械運転でとりわけ高い。

一方、事務職などでは求人倍率がまだ低い。一般事務の職業では0.31倍と1倍を大きく下回る。運搬・清掃・包装や機械組み立ても低水準だ。業種ごとで人手不足による賃金上昇への波及にも偏りが出る可能性がある。今後は求人倍率が低い職種でも賃金上昇が広がるかが焦点になる。

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