2019年5月21日(火)

石油禁輸 駆け引きへ 北朝鮮非難、安保理が議長声明

2017/8/30 22:29
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日本政府は北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、米韓両国とともに国連安全保障理事会で石油禁輸措置を含めた強力な追加制裁をめざす。北朝鮮制裁は総論で各国の賛成が得られても、北朝鮮を現実的に追い詰める厳しい措置に議論が及ぶと、中国やロシアが慎重姿勢を崩さない。当面は国連を舞台にした外交的な駆け引きが活発化しそうだ。

国連安保理は29日(日本時間30日)、北朝鮮を非難し、ミサイル発射の即時停止を求める議長声明を採択した。拒否権のある中ロも反対せず、全会一致で合意した。

議長声明は国連の公式文書として残るため、非公式の報道声明よりも格上の位置づけだ。ミサイル発射で議長声明を出すのは2012年4月以来、約5年ぶり。速やかな緊急会合の開催と議長声明の採択は日米韓が主導した。

日本政府は米韓両国と協力し、二段構えで北朝鮮の核・ミサイル開発資金を断つ経済制裁を実現したい考え。まずは、北朝鮮の主要な輸出品である石炭や鉄・鉄鉱石、鉛、海産物の輸出の全面禁止や、北朝鮮労働者の国外での新たな受け入れ禁止などを盛り込んだ8月5日の決議の完全順守を各国に求める。問題はその先だ。菅義偉官房長官は30日の記者会見で、石油の禁輸措置が選択肢の一つだと明らかにした。

韓国政府などの推計では、中国はパイプラインで年間50万トン程度の原油を北朝鮮に供給している。ロシアも輸出する。北朝鮮への石油が禁輸されれば、ガソリン高騰などで市民生活が打撃を受けるだけでなく、燃料を大量消費する軍が身動きをとれなくなる。戦前の日本はいわゆるABCD包囲網として、対日石油禁輸で追い詰められ、真珠湾への奇襲攻撃で太平洋戦争の戦端を開いた。石油禁輸は北朝鮮の暴発を招きかねないとして慎重論もある。

米国とは今回のミサイル発射を巡り、危機意識に微妙な温度差もある。列島が射程に入り、直接の脅威にさらされる日本は一刻も早く制裁強化を実現したいのが本音。一方、米国には今回のミサイルが「北米への脅威にはならなかった」(国防総省)との受け止めも出ている。

もっとも、トランプ米大統領は30日朝(日本時間同日夜)、自身のツイッターで「米国は25年間、北朝鮮と交渉して彼らに法外な金を払ってきた。対話は解決策ではない!」とつぶやいた。北朝鮮への圧力強化を訴える日本側の強い働きかけに一定の理解を示したとの見方もある。

韓国との連携を不安視する見方もある。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は就任以来、北朝鮮に対話再開を呼び掛けてきた。日本側が呼び掛ける圧力路線にどこまで応じるかは不透明だ。

中国とロシアの対応が大きなカギを握るのは間違いない。河野太郎外相は30日の参院外交防衛委員会で「石油は中国が大部分を供給している。中国とロシアが議論のテーブルにつくことが大切だ」と強調した。中国の王毅外相は30日「国連安保理メンバーの共有認識に基づいて必要な対応をする」と述べ、北朝鮮への制裁強化などに一定の協力をする考えを示した。ただ、安保理決議の枠外の独自制裁については反対を表明した。中国は北朝鮮社会の混乱を招くとして石油禁輸には一貫して反対している。

ロシアも北朝鮮への追加制裁に慎重な姿勢を変えていない。タス通信によるとロシアのネベンジャ国連大使は29日、追加制裁をとった場合「北朝鮮との建設的な協議をする余地をなくしてしまう」と強調。米国などの単独制裁にも反対する立場を重ねて示した。追加制裁よりも、まずは制裁強化を盛り込んだ5日の安保理決議を履行するのが重要だとの考えも表明。北朝鮮の核・ミサイル実験の停止と米韓軍事演習の縮小を柱とした中ロの案を軸に事態収拾を急ぐよう求めた。

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