歳出抑制「目安」止まり、成長重視 骨太方針閣議決定
政府は30日夕の臨時閣議で経済財政運営の基本方針(骨太の方針)と成長戦略、規制改革実施計画をそれぞれ決定した。骨太の方針に盛り込んだ財政健全化計画は2020年度の財政の黒字化目標を堅持したが、歳出額の上限を設定せず、緩やかな「目安」にとどめた。経済の好循環による税収増で財政を立て直す成長重視の姿勢を鮮明にした。

国と地方の財政の健全性をあらわす基礎的財政収支について、20年度に黒字化する従来目標を守る。達成に向けては、経済成長による税収増や歳出改革を重視する。17年4月の消費税率10%への引き上げを前提にしているが、10%を上回る増税は想定しない。
歳出改革は社会保障が中心だ。骨太の方針は新薬より割安な後発薬の使用割合引き上げ、外来受診料や介護保険料の個人負担増、高所得者の年金給付見直しなどを例示した。安倍晋三首相は具体策を記した工程表を年内にまとめるよう、甘利明経済財政相に指示した。
財政再建を促すため、18年度までを集中改革期間と位置づけ、2つの目安も設けた。
第1の目安は、18年度の基礎的財政収支の赤字幅を国内総生産(GDP)の1%程度にすることだ。内閣府試算によると、15年度は3.3%の赤字幅。実質2%以上の成長を実現できても、18年度はGDP比2.1%(12兆円)、20年度も同1.6%(9.4兆円)の赤字が残る。18年度の目安をクリアするには、内閣府試算よりも6兆円程度の赤字圧縮が必要だ。
第2の目安は、国の政策経費である一般歳出の伸びに設けた。安倍政権がこの3年間で一般歳出の増加を1.6兆円に抑えた基調を、18年度まで守る。高齢化で社会保障費の年1兆円増が見込まれるなかで、抑制された水準ともいえる。
ただ目安には幅を持たせ「経済・物価動向等を踏まえる」と物価上昇による歳出上振れを認めた。18年度に検証し必要なら「歳出、歳入の追加措置を検討する」とした。
骨太の方針は規制改革をはじめとした成長戦略も柱に据えた。税収増をもたらす成長戦略は、財政健全化と密接に絡む。
成長戦略では労働力不足による供給制約を解消するため、企業の生産性向上を後押しする方針を示した。規制改革の実施計画は農地集約に向けた耕作放棄地への課税強化、医薬分業や理美容などの規制見直しを列挙した。
法人実効税率の引き下げや「岩盤」といわれる農業、労働分野の規制改革を目玉とした14年の成長戦略に比べると、15年はやや小粒だ。首相は「未来への投資を行い、生産性革命を実現しなければならない」と説くが、企業の背中を押すには力不足との指摘もある。
骨太方針には政権の肝煎りの政策を盛り込む。14年は安倍政権が法人実効税率を「数年で20%台に引き下げる」と明記した。歳出抑制を目指す財務省と、予算確保を狙う与党や各省庁の間で骨太方針の中身や文言をめぐって激しい駆け引きが起きやすい。
安倍政権は昨年11月、15年10月からの消費税率引き上げを見送ると決めた。同時に、今年の骨太方針で20年度までの財政の健全化計画も作ると表明した。中期の財政健全化計画が経済政策運営の大きな争点となるのは、小泉政権時代の06年以来、9年ぶりだ。日本の財政悪化は主要国でも突出している。経済の収縮をもたらさずに、財政収支の改善を実現する道筋を示せるかが焦点になっていた。