都議会で44年ぶり全会一致可決 小池知事の予算案
東京都の小池百合子知事が初めて編成した2017年度の一般会計予算が30日、都議会の本会議で全会一致で可決、成立した。全会一致は美濃部亮吉氏が都政を担った1973年度以来、44年ぶり。7月の都議選をにらみ「小池人気」を警戒する各会派の思惑が立場を超えて一致した。都議会は同日閉会し、各陣営は事実上の選挙モードに入る。
小池氏は都議会閉会後、記者団に「いろいろ濃淡はあるが、都政を良くしていくという一点で(各会派に)協力をしてもらった」と語った。全会一致を演出したのは共産党と、小池氏と対立してきた自民党だった。
共産党は鈴木俊一都政以来、知事とは対決姿勢を示し、予算案には一貫して反対の立場を取ってきた。30日の本会議の討論では「都民の願いを反映した重要な前進があった」と賛成に転じた理由を説明した。
翻意の背景には都議選がある。高い支持率を誇る小池氏との対決は避けたいのが本音。現在は都議会で17議席だが、民主党が躍進した09年には「二大政党制」の波に押されて8議席に落ち込んだこともある。予算成立へ協力姿勢を示し、小池氏が実質的に率いる「都民ファーストの会」との衝突を避ける狙いだ。
豊洲市場(江東区)の移転問題で知事と厳しく対立した自民党も「予算原案を否定するものではない」と賛成に回った。これまでの定例会でも条例案にはすべて賛成しており、ある自民都議は「正面から対決した場合、有権者の反発を招く可能性がある。あえて反対する必要はない」と語る。
開会中に都民ファーストとの選挙協力を決めた公明党は「公明党の要望に応えた大胆な予算配分」と指摘。小池氏との連携をめざす民進党系の東京改革議員団は「明るい未来への道筋を紡ぐ予算だ」と評価した。
都議会の閉会を受けて、各陣営は127議席を争う都議選の準備を急ぐ。都民ファーストは単独過半数(64議席)の獲得をめざし、70人規模の候補を擁立する方針。3月の日本経済新聞の世論調査では、都民ファーストに「期待する」が59%と「期待しない」の31%を上回った。「小池人気」にどう対峙するかが各党の選挙戦略の肝になる。