ミサイル対応 政府緊迫 首相「動きを把握」

2017/8/30 1:05
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政府は29日、北朝鮮が早朝に弾道ミサイルを発射したことへの対応に万全の態勢で臨んだ。安倍晋三首相は同日朝に開いた国家安全保障会議(NSC)後、首相官邸で記者団に「ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握していた」と強調し、情報収集能力の高さを誇示した。ただ、ミサイルの性能や方角など、分析情報が混乱するなど課題も残った。

「ミサイル発射。ミサイル発射。頑丈な建物や地下に避難して下さい」。北朝鮮が弾道ミサイルを発射して4分後の午前6時2分。政府は全国瞬時警報システム「Jアラート」で、全国に北朝鮮からミサイルが発射されたことを伝えた。NHKは画面一面を使ってメッセージを伝えた。

地上では、イージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で迎撃し損ねたミサイルを狙う地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)が構えていた。防衛省はミサイルの破片などの落下物はPAC3で迎撃可能と説明する。今回はミサイルの軌道近くに配備されていたPAC3が、ミサイルを射程に収めていたかどうかは微妙だ。仮に落下物があった場合、迎撃できなかった可能性もある。

ミサイルの飛行ルートの情報に「誤差」が生じたことも課題だ。最初のJアラートと同時刻に送信した緊急情報ネットワークシステム「エムネット」は「東北地方の方向に発射された模様だ」としていた。14分後には「北海道地方から太平洋へ通過した模様」とし、「東北地方」としていた当初の飛行方向について情報を微修正した。

総務省消防庁はJアラートで当初から北海道と東北地方を含む計12道県を警告対象にしていた。政府関係者は「実質的な影響は皆無」としたが、NSC関係者は「誤差とはいえ、国民の安心を高めるために予測精度を上げたい」と語った。

防衛省でも、発射されたミサイル情報の分析で混乱が生じた。小野寺五典防衛相は29日午前、3つに分離したことを確認したと言明していた。夜になって防衛省担当者は「分離していない可能性もある」と修正し、小野寺氏は「(ミサイルが)分かれたことも含めて分析している」と発言を後退させた。ミサイルの分析や情報発信に不安を残す結果となった。

北朝鮮が日本上空を越えるミサイル発射を事前通告なしに実施したのは1998年8月以来だ。だが複数の政府関係者によると、北朝鮮でのミサイル発射の兆候は「数時間前」に把握していたという。

29日午前6時すぎには首相官邸に菅義偉官房長官や小野寺氏が到着し官邸職員らも集まっていた。首相は前夜から官邸に隣接する公邸に宿泊。ミサイル発射から25分後の午前6時23分に官邸入りし、記者団に「ミサイルがわが国上空を通過したもようだ。国民の生命をしっかり守っていくため万全を期す」と伝えた。

首相はすぐにトランプ米大統領との電話協議も指示した。当初午前10時に予定していた閣議の時間もずらして、ミサイル発射から約3時間半後の午前9時24分にトランプ氏と電話をした。

「ヘイ、シンゾー!」。トランプ氏は開口一番、首相にこう呼びかけ、北朝鮮情勢については「同盟国として米国は百パーセント日本と共にある」と日本防衛の意思が変わらないと伝えた。

約40分に及ぶ電話協議は、日米が今後取るべき対応についての「相当突っ込んだやりとり」(政府筋)だったという。首相は朝から比較的落ち着いた様子を見せていたが、電話協議後、記者団には「これまでにない重大で深刻な脅威だ」と語気を強める一幕があった。

首相が関係閣僚らと安全保障上の重要な事案を話し合うNSC閣僚会合も、2013年のNSC発足当初は関係閣僚の日程調整すら手間取ったが、今では円滑に開けるようになってきた。

29日はミサイル発射から約1時間後の午前7時8分に最初の会合を開いた。その後、関係省庁が外交やミサイル技術に関する情報を収集し、その結果を持ち寄って、午後6時8分に同日、2度目のNSCを開いた。

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