「民泊」に安全など3つの課題 有識者会議の議論スタート
国土交通省と厚生労働省は27日、一般住宅に旅行者らを有料で泊める「民泊」の解禁に向け、有識者会議の議論を始めた。民泊は旅館業法で禁止されているが、両省は省令改正などで来年4月にも解禁する。解禁に向けたルール整備では安全の確保、近隣住民とのトラブル防止、旅館やホテルとの公平な競争環境の確保という3つが課題となる。

違法な状態での普及に対応するため、両省は来年4月にも解禁する。その後にインターネット仲介業者の扱いも合わせた抜本的なルール整備を法改正も含め関係省庁と進める。有識者会議はその課題を洗い出す。
主な論点は3つある。第1に安全の確保だ。民泊がテロリストや犯罪者の温床とならないよう宿泊者の情報をどうつかむかが焦点。宿泊者の名簿を数年間保存してもらう案などが想定される。
第2に近隣住民とのトラブル防止。外国人観光客は日本のマナーがわからず、ゴミ出しや夜間の騒音などで近隣住民から苦情が出ることも多い。
第3は旅館やホテルとの公平な競争環境をどう確保するか。設備要件などが厳しい旅館・ホテルと比べ民泊が過度に有利になれば不公平だ。
初回の会議では「民泊は経済成長につながる。法改正しなくてもできるものは早く対応すべきだ」(松村敏弘東大教授)との意見が出た。一方で、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の北原茂樹会長は「諸外国が規制を強める中(事例を)検証していくべきだ」と慎重な取り組みを求めた。今年度中に中間報告をまとめ、来秋をメドに最終報告書をつくる。
訪日外国人の急増で東京や大阪ではホテルや旅館が足りない。インターネット仲介などを利用し、民泊は事実上広がりつつある。厚労省は繰り返し料金を取る場合、マンションや戸建て住宅を使った民泊も旅館業法の営業許可が要るとの立場で、いまの民泊は多くが違法だ。
無許可の民泊がこのまま広がれば、安全の確保が難しくなるほか、近隣住民とのトラブルも増えかねない。このため国交・厚労両省は旅館業法の省令改正などで来年4月にも民泊を認める方向。民泊を客室数の制限がないカプセルホテルなど「簡易宿所」の一種として位置づけ、面積基準などを緩める案を軸に検討している。