2019年7月24日(水)

介護費「賃上げ」除き抑制 厚労省3年ぶり改定、増税延期響く

2014/11/27付
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厚生労働省は2015年度から介護保険サービスにかかる費用を、職員の賃上げなどを除いて抑制する方針だ。特別養護老人ホーム(特養)などに支払う「介護報酬」を一部引き下げ、財政膨張に一定の歯止めをかける。来年10月に予定していた消費再増税が先送りされたため、見込んでいた財源が得られなくなった影響もある。

26日に社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護給付費分科会を開き、介護費用を抑制する方針を確認した。厚労省は来月の衆院選後に見直し案を最終的にとりまとめる。サービスごとの具体的な報酬額は財務省と調整して年明けに決める。介護費は原則3年に1度見直しており、15年度は改定年にあたる。

今回の改定は大きく3つの柱に分けられる。第1の柱は介護職員の賃上げに充てる費用を増額することだ。介護は人材難が続いており、団塊の世代が75歳以上になる25年時点で100万人の人手が不足するとされる。介護職員の平均賃金は月額約24万円と、全産業の約32万円に比べ低く、なかなか人手が集まらない。

09年度、12年度と直近2回の介護費の改定でも賃上げを行い、厚労省は合わせて月額3万円相当の効果があったとしている。それでも賃金は低めで、人材の定着には至っていない。自民党は衆院選の公約に賃上げを盛り込んでおり、介護の価格改定で優先的に見直す。

介護職員の賃上げの原資はまず事業者に支給する。厚労省は事業者が適切に職員に配分するように制度を改め、非正規社員を正規社員にしたり、出産・子育てを支援したりといった処遇改善に取り組む事業者に限って「処遇改善加算」を増額する。当初は消費税の再増税で財源を確保し、介護職員の賃金を最大で月平均1万円程度上げる考えだったが、増税延期で賃上げ幅は縮まる可能性がある。

第2の柱は賃上げ以外の費用は極力抑制することだ。介護費の総額は14年度には10兆円に膨らみ、25年度には21兆円に増える見通しだ。65歳以上の高齢者が負担する保険料(全国平均)は現在の月4972円から25年度には8200円程度に上がるとされ、財政や家計を圧迫する費用増に歯止めをかける必要がある。

抑制の対象は特別養護老人ホームや通所介護(デイサービス)などだ。事業者の利益率が高いためで、事業者が受け取る利用者1人当たりの基本費用を下げる。特養ホームなら1日最高9千円程度、デイサービスなら1回あたり最高1万4千円程度で、うち1割が自己負担だ。基本費用が下がれば自己負担も減る。

特養ホームやデイサービスの基本費用は前回の改定でも下げたが、厚労省が今年調べた利益率は特養が8.7%、デイサービスが10.6%と依然として高いまま。特養ホームについては、運営を独占する社会福祉法人が平均3億円、総額2兆円もの剰余金を蓄えているとの指摘もある。基本料をもう一段下げ、高すぎる利益率を是正する。

第3の柱は利用者個人の自己負担の引き上げだ。特養ホームの部屋代は全額自己負担が原則だが、4~6人で利用する相部屋の場合は1人当たりの負担はほとんどなかった。来年度以降は相部屋でも月1万5千円程度の負担を求める方針だ。

特養ホームで個室を利用すると光熱費も含めて月6万円を負担する場合があり、格差を少なくする。ただ厚労省は低所得者には補助を出して負担は増やさない考えだ。負担増に敏感な高齢者を刺激したくない与党に配慮したとの見方もある。

厚労省はサービスごとの報酬を抑制する方針だが、介護サービスを利用する高齢者が増えているため、来年度以降も介護費用の総額は増える見通しだ。財務省などは厚労省に介護報酬の単価を平均6%引き下げるよう求めてきた。増税延期によってもう一段の単価抑制が必要との指摘もある。

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