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契約ルールで消費者保護 民法改正、法制審が原案

法制審議会(法相の諮問機関)の民法部会は26日、消費者や企業の契約ルールを定める債権関係規定(債権法)の改正原案をまとめた。抜本改正は1896年の制定以来初めてで、長引く低金利やネット取引の普及などを踏まえ、消費者保護に軸足を置いて見直した。法制審は来年2月に法相に正式に答申、法務省は通常国会に民法改正案を提出する方針だ。

法定利率下げ

会社員のAさん(42歳男性、年収500万円、妻と子ども2人)が交通事故で亡くなった場合、受け取る損害賠償金(治療費や慰謝料などは除く)は今は4932万円だが、民法改正後は6094万円に――。

交通事故の損害賠償に詳しい高木宏行弁護士はこう試算する。民法改正原案の柱の一つは、低金利時代に応じた金融面での消費者の保護だ。民法が定める利率(法定利率)を現行の5%の固定から3%に引き下げ、その後は3年ごとに1%刻みで見直す変動制の導入を盛り込んだ。

利率引き下げは交通事故の被害者に支払う損害賠償の増額につながる。賠償額は生きていれば得られた利益を一括してもらうが、生きていたと想定する期間に見積もれる運用益は除く。運用益は法定利率と同じ金利で計算するため金利が下がれば少なくなり、受け取る賠償額は増える。

一方、損害保険会社は支払う保険金が増え、自動車保険などの保険料引き上げが想定される。日本損害保険協会は26日、「保険金に影響があると思われるが、どの程度の影響があるかは明示できない」とコメントした。

法定利率は損害賠償訴訟で賠償の支払いが確定するまでの期間の利息を計算する時にも用いる。利息を決めずにお金をやり取りして金銭トラブルになった場合、裁判などでも法定利率を当てはめて利息をはじき出す。

公証人を義務化

もう一つの柱が連帯保証制度の見直しだ。中小零細企業への融資では、契約に詳しくない経営者の家族らが連帯保証人となり、多額の借金を背負って生活破綻に追い込まれる事態が少なくない。改正原案は家族ら第三者が個人で保証人になる際は、公証人が立ち会い、自発的な意思を確認することを条件とした。

法務省は当初、安易に保証人になるのを防ぐため、家族らが保証人になるのは原則認めない案を検討した。これに中小企業側からは「家族の個人保証は不動産など担保が十分でない中小企業の信用力を補う。過度に条件を厳しくすれば融資の条件が厳しくなる」との懸念が相次いだ。

改正原案はこうした懸念を踏まえ、条件付きで家族らが保証人になるのを認めた。融資が厳しくなるのを懸念する声は残るが、日本商工会議所は「実態に即した内容になっており、民法改正後も大半の中小企業の資金調達に大きな影響は出ないだろう」と話している

支払い時効統一

お金の支払いの「時効」も見直す。今は飲食代は1年、弁護士費用は2年、診察料は3年と支払う内容によって時効の期間が異なるが、これを5年に統一してわかりやすくする。飲食代も5年前のツケまで請求が有効になる。

改正原案ではマンションなどを借りた時の敷金の返還ルールも定め、貸主に契約終了時に敷金を返すよう義務付けるとした。経年劣化による補修費分は貸主の負担とする。賃貸契約の際、保証人が負う賠償の限度額も定めるとした。

 ▼法定利率 お金を貸し借りした人が、金利を特に定めなかった場合に自動的に適用される利率。民法404条で「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分(5%)とする」と規定している。これは1896年の制定時から変わっていない。

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