社外取締役を複数化 金融庁と東証が企業統治指針原案
金融庁と東京証券取引所は25日、企業統治指針をつくる有識者会議を開き、社外取締役を2人以上置くよう促す指針原案を提示した。海外投資家にとって分かりにくい日本の企業慣習の透明性を高めるため、企業間で株式を持ち合う場合は株主に理由を説明するよう求めるなど、5つの柱で構成する。2015年の導入を目指す。
企業統治(コーポレートガバナンス)の強化は、安倍晋三政権が6月にまとめた新成長戦略の柱の一つだ。金融庁と東証が具体策を詰めており、25日まとめた指針案では(1)持ち合い株の狙いを説明する(2)女性の活用を含む社内の多様性を確保する(3)取締役の選任方法を開示する(4)社外取締役を2人以上選任する(5)株主と建設的な対話を行う――などを掲げた。
企業統治策は東証1部・2部に上場する約2380社が対象になる見通しだ。今回の案は指針にとどまるため、各企業は統治強化策をすべて採り入れる義務はないが、導入しない場合は理由などを開示するよう求められている。投資家にとっては企業を選ぶ重要な材料となる。12月中旬に正式決定し、来年6月前後に各企業が開く株主総会で、新指針をどこまで各企業が採り入れたか情報開示するよう求める。
柱の一つは社外取締役を2人以上置くよう促したことだ。指針案では「少なくとも2人以上」とし、国際的に事業展開する大企業には自主判断で取締役会の「3分の1以上の社外取締役を選任する」ことも明記した。
東証1部上場の約1800社のうち複数の社外取締役を置くのは全体の3分の1にとどまる。産業界には「(複数化するなら)東証1部企業に限っても2100人の人材が必要になる」(日本監査役協会の太田順司最高顧問)などと人材確保に懸念がある。そのため金融庁は、複数の社外取締役をすぐに導入しない企業でも「3年後に向け人材を選定中」などの開示で容認する考えだ。
米国ではニューヨーク証券取引所が上場企業に社外取締役を過半数にするよう求める規則を設けているほか、英国でも同様の指針がある。金融庁は海外からの投資を増やすために日本企業の統治方法を透明にするよう求めており、日本の指針も米英の基準に近づける。
持ち合い株の保有理由や取締役の選任・報酬の決定方法も開示するよう求めた。欧米では株式持ち合いはほとんどない。日本の持ち合いは投資先が事業不振に陥っていても黙認するような「もたれ合い」があるとして海外投資家の評判が悪い。情報開示を強化して透明性を高める狙いだ。
ほかにも株主が企業と直接対話できるよう、窓口となる取締役を指定するなど体制づくりを求める。買収防衛策がなぜ必要か株主に十分説明することも盛り込んだ。