天皇陛下、18年中に退位へ 公務すべて新天皇に
天皇陛下の退位に関する政府の有識者会議(座長・今井敬経団連名誉会長)は21日、一代限りの退位に向けた最終報告をまとめ、安倍晋三首相に提出した。退位後の呼称を「上皇」とし、象徴としての行為を新天皇に全て譲るなど退位の制度設計が柱だ。政府は報告を踏まえた特例法案を5月中に提出し、今国会での成立をめざす。退位の時期は2018年中となる見通しだ。現行憲法に規定のない天皇退位が実現する。

首相は会議で「国家の基本の問題であるとともに、長い歴史とこれからの未来にとって重い課題だ」と強調。特例法案について「速やかに国会に提出するよう全力を尽くしたい」と語った。退位の具体的な時期は政令で定める方向。政府は特例法の成立後直ちに新元号の選定作業を加速させる。
最終報告は退位後の天皇の呼称を「上皇」、そのきさきを「上皇后」とし、敬称を「陛下」とした。上皇は皇位継承資格や摂政・臨時代行就任の資格などを有しないと明記。「退位後の天皇と新天皇の間で、象徴や権威の二重性などの弊害を生じさせない」ためとした。
秋篠宮さまは皇太子待遇とし、皇位継承順位1位の皇族を指す「皇嗣」を付け「皇嗣殿下」などと呼ぶ。活動予算も皇族費から定額の「3倍に相当する額」を支出する。今後の課題として、皇族数の減少への対策について「速やかに検討することが必要だ。国民各界各層で議論が深められていくことを期待したい」と指摘した。
退位を巡る議論は、陛下が16年8月の「お言葉」で「次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」と退位の意向を強く示唆されたのがきっかけだ。
政府は16年10月に有識者会議の初会合を開き、高齢を理由にした退位を含め、天皇の公務の負担軽減策の検討を始めた。
議論の焦点となったのは退位そのものの是非や、退位を認める場合はいまの天皇陛下一代限りとするか、恒久的な制度とするかという点だった。一代限りなら特例法で対応できるが、恒久制度化なら前例のない皇室典範の抜本改正が必要となる。
首相官邸は典範改正に踏み込めば保守層の反発が根強い女性宮家の創設などを巡る議論につながる可能性があると懸念。恒久制度化には当初から慎重だった。
有識者会議が今年1月にまとめた中間報告となる論点整理は、退位を容認する意見を列挙したうえで、恒久制度化した場合の課題を多く並べることで「一代限り」に力点を置いた。
これを踏まえ、国会では法整備に向けた与野党協議が始まった。一代限りの特例法を求める与党と、典範改正による恒久制度化を求める野党が対立。退位を特例法で認める一方、今回の退位が今後の先例になると解釈できる文言を典範の付則に盛り込むことで歩み寄った。3月に衆参正副議長が提言を取りまとめた。
有識者会議の最終報告は、この与野党合意を踏まえた具体的な制度設計に当たる。21日の会議後、座長の今井氏は記者会見で「もし将来このような事態が起こったら、そのときの国民が今回の結論を参考にしながら慎重に協議して最善の結論を出せばいい」と指摘。今回の退位を巡る議論が将来の先例になるとの見通しを示した。