地価上昇、地方に広がり 福岡など三大都市圏上回る
2017年の地価上昇は地方都市にも広がりをみせた。中心部や駅前で再開発が進み、中核都市での地価を押し上げる要因になっている。工業地も物流施設の増加を背景に26年ぶりのプラス。東京など利便性の高い地域の活発な取引が周辺に波及している。緩和マネーの拡大が全国を潤すが、長らく続いた資産デフレは解消へようやく一歩踏み出したところだ。

商業地
2年連続の上昇となった商業地。けん引役を担ったのは地方の政令指定都市だ。福岡、広島、仙台、札幌の4市の上昇率は7.9%。全国の0.5%、三大都市圏の3.5%を大きく上回った。この4市には共通点があり、いずれも訪日客の増加でホテルの建設が進み、緩和マネーの受け皿となって再開発が加速している。
九州最大の繁華街、福岡・天神。県内最高値となったのは同地区にあるビルだ。再開発への期待から前年より16.5%上昇した。福岡市は「天神ビッグバン」と銘打ち、建物の高さや容積率を緩和している。西日本鉄道も市内中心部の土地と建物を61億円で取得。土地の坪単価は単純計算で約1千万円だ。地元金融機関は「相場の倍。考えられない高値」と驚く。
仙台市ではJR仙台駅東口で18.3%と高い伸びを示した。仙台駅周辺は西口を中心に発展。駅の東西を結ぶ自由通路が昨年完成し、遅れていた東口再開発に弾みがついた。地元の不動産鑑定士は「駅周辺の上昇傾向はしばらく続く」と明言する。広島駅でも10月に新しい「駅ナカ」商業施設が開業するなど、再開発案件が目白押しだ。
■工業地
工業地は全国の上昇率が26年ぶりに0.002%のプラスに転じた。通販市場の拡大が続き、最新の物流施設が高速道路の沿線に数多く立地し、地価を押し上げた。インターチェンジ(IC)付近の地価上昇が目立ち、工業地の上昇率トップは首都圏中央連絡自動車道(圏央道)のICがある茨城県五霞町だった。

利便性の高い高速道路沿線は陣取り合戦の様相を呈す。シンガポールのグローバル・ロジスティック・プロパティーズは、圏央道川島IC(埼玉県川島町)付近で4月に大規模物流施設を開業。沿線には開発中を含め11施設を持つが、平均稼働率は90%超だ。三菱地所も3月、神奈川県厚木市で延べ床面積3万平方メートル弱の大型施設を設け、倉庫大手による1棟借りの契約を結んだ。
■住宅地
住宅地は26年連続でマイナスとなったが、地方圏1万573地点のうち、上昇地点は1583と前年より255増えた。下落率2.9%と全国ワーストの秋田県でも上昇地点が昨年の1から6に増えた。最高価格は秋田駅東口前。区画整理を終えた住宅地にあたり、人口減が進む地方でも、利便性の高い都市部は人気だ。住宅地の地価は昨年から今年にかけて反転の兆しが強まり、これからの持続力が問われる局面を迎えている。